冬が旬の魚・8 金目鯛(きんめだい)

【特徴・由来】

旬は冬。
深海魚につき季節はあまり関係ありませんが、
脂がのるのは冬です。

キンメダイ科(タイ科ではありません)で、全長40cm前後。
釧路沖以南の太平洋側の深海の岩礁に棲息(せいそく)します。

大きな目が金色に輝いているので、この名前が付きました。
因みに(ちなみに)、東京付近では「きんめ」と呼びます。

身が柔らかく、脂肪の多い白身魚です。

真鯛(まだい)の代わりに祝儀用に、
尾頭(おかしら)付きで用いる地方もあります。

以前は、関西では馴染み(なじみ)の薄い魚でしたが、
最近では全国的に知れ渡って来ました。

主な漁獲地は、静岡・千葉・東京・長崎・高知等。
静岡の「稲取(いなとり)キンメ」、千葉の「銚子つりきんめ」
高知の「土佐沖どれ金目鯛」等がブランドです。

 

【選ぶ時のポイント】

体色やえらが赤く鮮やかで、
目や鱗(うろこ)が金色に光っているものが良いです。

 

【栄養および健康への効果】

たんぱく質や脂肪が多く、脂溶性(しようせい)ビタミンが豊富です。
DHAやEPAも多く含まれます。

 

【可食部100gあたりの主要な栄養成分】

金目鯛(生)

エネルギー  160kcal
たんぱく質  17.8g
脂質      9.0g
炭水化物    0.1g
カリウム   330mg
カルシウム   15mg
マグネシウム  73mg
リン     490mg
ビタミンA   63µg
ビタミンD    2µg
ビタミンE  1.7µg
ナイアシン  2・7mg

*1000µg=1mg

 

【和食の調理のコツ】

煮付けが代表的な料理ですが、
鍋物・味噌(みそ)汁・照り焼き等にもします。

煮付け

煮付けの場合は、
小さい場合は一尾(いちび)のまま、大きい場合は切り身で使います。
脂が多いので、濃い目の味付けが合います。

 

焼く場合

三枚におろして皮目に熱湯を掛ける皮霜(かわしも)造り
皮目を炙る(あぶる)焼霜(やきしも)造りにすると、
皮が引き締まり、皮の色も活かせます。

利久焼き(りきゅうやき)は、
醤油・酒・みりん・練り胡麻(ねりごま)を合わせた漬け汁に
20分程漬け(つけ)て焼きます。

火が通ったばかりの美味しさがピーク。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
新しい食生活を考える会
『食品解説書つき新ビジュアル食品成分表 新訂第二版』

冬が旬の魚・7 鯉(こい)


masy様(改変)

【特徴・由来】

旬は冬。
特に、脂の載る(のる)11月~1月が美味しい(おいしい)です。

コイ科の淡水魚で、全長20~50cmで、1mに達するものもあります。

北海道から九州まで分布し、
野生の希少種「野鯉(のごい)」と養殖の「大和鯉(やまとごい)」を合わせて
「真鯉(まごい)」と呼びます。

なお、食用に流通するのは、後者「大和鯉」です。

さて、日本人は、はるか縄文時代より鯉を食べており、
また、生命力・繁殖力が強く、気性が大人しく輸送に向いていることで、
早くから各国で養殖が行われていました。

日本でも江戸時代初期に養殖が始められ、
海から離れた内陸部の貴重なたんぱく源でした。

長命で堂々とした姿は、「淡水魚の王様」であり、
祝宴の席にも用いられます。

こうした事情を反映してか、
鯉が鯛(たい)よりも高価な時代もありました。

 

養殖

調理の際、以前は泥を吐かせていましたが、
養殖技術の進歩で泥臭さは減少しました。

また、主な漁獲地は茨城・福島・宮崎等。
ブランドとしては、長野の「佐久鯉(さくごい)」が有名です。

現在では、流通しているもののうち、90%が養殖ものです。
2年程飼育して、750g位になったところを出荷します。

 

【選ぶ時のポイント】

一尾魚(いちびざかな)の場合は、目が澄んで、えらが赤いもの、
切り身は、身に張りがあるものが良いです。

 

【栄養および健康への効果】

たんぱく質や脂肪が多く、ビタミン・ミネラルも豊富な、
栄養価の高い魚です。

 

【可食部100gあたりの主要な栄養分】

鯉(養殖・生)

エネルギー  171kcal
たんぱく質  17.7g
脂質     10.2g
炭水化物    0.2g
カルシウム  340mg
ビタミンD  14.0µg
ビタミンE   2.0mg
ナイアシン   3.0mg
ビタミンB12 10µg
パントテン酸  1.48mg

*1000µg=1mg

 

 【和食の調理のコツ】

生きたものを使うのが原則で、頭を叩いて仮死状態にしてから処理します。

塩焼きは淡泊な味わいです。

 

刺身(さしみ)・洗い

刺身にするなら、
胸びれの下にある苦玉(にがだま≒胆のう)を
潰さないで(つぶさないで)丁寧に取り出し、
三枚におろします。

さらに、そぎ身にし、冷水でさらした「洗い」は、
鮮度が良い程、筋肉がよく縮み、歯切れ良く味わえます。

洗いは酢味噌、普通の刺身は柚子胡椒(ゆずこしょう)が
おすすめです。

 

鯉こく

「鯉こく」は、身を濃い目の味噌(みそ)汁で煮たものです。

まず、身を濃いめの味噌汁で一昼夜程煮込み、
固い骨まで食べられる程柔らかくし、
長葱(ながねぎ)や粉山椒(さんしょう)でいただきます。

 

その他

また、鯉は鱗(うろこ)も食べられる珍しい魚です。

醤油・砂糖・みりんで煮た旨煮、
骨や内臓を味噌味のアラ汁に仕立てるのもおすすめ。

なお、中華料理では丸揚げ甘酢あんかけ、
西洋料理では、ドイツの青煮、フランスのビール煮等が有名。

 

【逸話】

江戸幕府においては、
祝い事に必要な魚の中でも、鯛と鯉は別格でした。

そして、江戸城中への納魚は、
魚河岸の中でも特別の役柄(鯉御用)を持つ商人が請け負っていました。

また、これに因んで(ちなんで)、松尾芭蕉の俳諧のパトロンが鯉問屋。
当時、鯉の商いはそれだけ羽振りが良かったのです。

例えば、高弟・杉山杉風(さんぷう)は有力な鯉問屋の出で、
芭蕉に多大な経済援助をして俳諧の発展に尽くしました。

さらには、芭蕉庵は先述の鯉御用・井上与市兵衛の所有する
深川の巨大な生簀(いけす)の番小屋を改造したものです。

別の逸話としては、プロ野球球団・広島カープの「カープ」は、
戦前の旧軍・第5師団の防諜名(ぼうちょうめい・コードネーム)の
「鯉」に因んだ(ちなんだ)ものです。

敗戦の傷跡が生々しい一方、
戦争文化が庶民の生活に大きい接点を持っていた時代の
産物なのかもしれません。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
新しい食生活を考える会
『食品解説書つき新ビジュアル食品成分表 新訂第二版』
冨岡一成『江戸前魚食大全』

冬が旬の魚・6 鮟鱇(あんこう)

KoK51様(改変)

【特徴・由来】

旬は冬~初春。
最も味が良くなるのは2月で、「鮟鱇は梅が咲くまで」と言われます。

東京から茨城にかけて、鮟鱇鍋は冬の鍋の筆頭格です。
茨城の大洗には、ロビーや広間等で解体ショーを行う旅館もあります。

また、鮟鱇は捨てるところがないと言われ、
ほほ肉(柳肉)、えら、肝臓(きも)、ひれ(とも)、卵巣(ぬの)、
胃袋(水袋)、皮が、通称「鮟鱇の七つ道具」

鮟鱇の肝臓が、「あん肝」です。

さて、鮟鱇はアンコウ科で全長1.5m程の大きさの魚で、
頭が大きく扁平で、胴や尾は極端に細く短い独特の形です。

北海道以南の日本近海に約60種いますが、
食用にするのは「黄鮟鱇(きあんこう)」と、黒褐色の「くつ鮟鱇」の2種類。

その中で、鮟鱇と言えば、前者の黄鮟鱇を指します。
本鮟鱇とも呼ばれます。

また、鮟鱇は肝臓の大きさで質と値段が決まると言われ、

市場では、腹を割いて(さいて)、
肝臓が良く見えるようにして並べられています。

なお、主な漁獲地は山口・茨城・福島等。
中でも茨城の「常陸もの」は高価で、美味な高級食材です。

中国・韓国・アメリカからの輸入もあります。

 

【栄養および健康への効果】

別名、「海のフォアグラ」。

良質なタンパク質が多く、脂肪は少なめで、低カロリー。
ひれや皮には、コラーゲンが豊富です。

【可食部100g当たりの主要栄養成分】

鮟鱇(生・肝)

エネルギー  445 kcal
タンパク質  10.0g
脂質     41.9g
炭水化物    2.2g
亜鉛      2.3mg
銅       1.0mg
ビタミンA(レチノール) 8300µg
ビタミンD   110µg
ビタミンE(α) 1.0mg
ビタミンB12 39.1mg
ビオチン    13.4µg
葉酸        88µg

*1000µg(マイクログラム)=1mg

【和食の調理のコツ】

形が安定しないのが欠点ですが、
鍋の使う時は、スーパーで鍋用に切ったものが売られています。

水分が多いので、さっと湯に潜らせて(くぐらせて)から用います。

また、寿司だねとして美味しい(おいしい)のは、
身と肝を合わせた、とも和えの軍艦巻です。

 

 

 

「七つ道具」の調理

先述の「七つ道具」のパック入りを使う場合は
卵巣胃袋塩もみして水洗いを行い、さっと茹で(ゆで)ます。

えらひれは、塩もみし、水洗いして骨や皮を除いて切ります。

その後、昆布等でダシを取り、豆腐や野菜等の具と一緒に煮る訳です。

 

「どぶ汁」

鮟鱇の鍋のバリエーションはさまざまですが、
有名なのは「どぶ汁」

どぶ汁は、身と野菜の水分だけで煮るのが特徴です。

「七つ道具」のひとつのあん肝でダシを取り、
他の七つ道具と野菜を入れ、味噌(みそ)を入れて味付けします。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
新しい食生活を考える会
『食品解説書つき新ビジュアル食品成分表 新訂第二版』

冬が旬の魚・5 海老(えび)~車(くるま)海老

【特徴・由来】

車海老の大半養殖で年中出回っていますが、本来の旬は冬。

節足動物の甲殻類で、
日本近海には約200種類が棲息(せいそく)しています。

食用として重要なものは、
「伊勢海老」、「車海老」、「芝海老」、「北国(ほっこく)赤海老」等。

日本では、海老は昔から食べられています。

特に伊勢海老は、長い髭(ひげ)が長寿の象徴であり、
古くから儀式や祝宴に供(きょう)され、
正月の酒席はもちろん、鏡餅や蓬莱(ほうらい)飾りに使われてきました。

そうした事情もあり、日本は世界有数の海老消費国で、
東南アジアや中国から大量に輸入しています。

なお、国内での養殖は昭和9年に車海老でスタートし、
1960年代に盛んになりました。

以降は、海老の中でも、
中心的な存在である車海老についての記述になります。

車海老はクルマエビ科。
全長20cm前後で、北海道南部以南の内湾や浅海に棲み(すみ)、
淡色の殻に茶褐色や青褐色の横縞があります。

全長10cm以下は、「才巻海老(さいまきえび、別名・小巻)」と呼ばれます。

味も姿も良い高級海老で、成長が早く、
市場に流通するのはほとんど養殖もの。

和食の場合は、姿も味も良く、
特に加熱した時の赤い縞目の美しさは見事で、
江戸前寿司(すし)のたねや天ぷらに不可欠な最高の素材のひとつです。

 

【選ぶ時のポイント】

殻が付いており、脚などがそろっているもの、
頭と尾の付け根がしっかりしているもの、
殻に透明感があって身が締まっているものが良いです。

冷凍ものは、頭が付いていれば、
新鮮なうちに冷凍された証拠です。

 

【栄養と健康への効果】

コレステロール含有量は多いものの、
その排出を促す(うながす)タウリン
動物性食物繊維のキチン・キトサンも含まれています。

キチン・キトサンは脂肪を吸着して排出することで、
肥満解消の効果があります。

ただ、キチン・キトサンは殻と尾に多く含まれていることで、
海老は丸ごと食べるのがおすすめです。

因みに(ちなみに)、殻と尾には、
カルシウムも含まれています。

また、タウリンは胆石の形成を抑えます。

なお、昆布(こんぶ)やわかめと一緒に食べると、
粘り成分のフコイダンが、腸内でコレステロールを吸着します。

 

【可食部100gあたりの栄養成分含有量】

車海老(くるまえび)

エネルギー   97kcal
タンパク質   21.6g
脂質      0.6g
炭水化物    微量
カルシウム   41mg
コレステロール 170mg

 

【和食の調理のコツ】

殻付きの場合の下処理は、
海老の消化器官である「わた」を取ることから始めます。

背中を丸めて持ち、背中の側の尾から2節目か3節目に竹串を指して、
背わたを引っ掛けるように持ち上げます。

この時、鮮度が落ちていると、途中で途切れることがあります。

その後は、調理の目的によって、頭や尾を取ったり、
殻を剥く(むく)等の作業をします。

例えば、茹でる(ゆでる)時は、
70℃で5~6分茹でると柔らかく仕上がります。

野崎先生によれば、海老に限らず、大抵の魚を煮る場合は、
70~80℃位が程良いそうです。

一方、寿司にする場合は、酢湯で茹でます。

 

天ぷらの調理

天ぷらの場合は、姿よく見せる方法として、
尾を付けて揚げる場合は、包丁で先端を切り揃え(そろえ)、
包丁の背で水気をしごきます。

水で油がはねるのを防ぐためです。

また、真っすぐな形に仕上げる場合は、
身の中心に竹串(たけぐし)を指してから加熱します。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』

冬が旬の魚・4 鱈(たら)

【特徴および由来】

旬は冬。
冬の定番の魚です。

タラ科で寒流に棲む(すむ)深海魚です。

日本近海には「真鱈(まだら)」、「すけとう鱈」、
「氷下魚(こまい)」等がいますが、
鱈と言えば、主に真鱈(まだら)を指します。

大きい物は1メートルに達する腹が脹らんだ(ふくらんだ)
貪欲な雑食性の魚で、
たくさん食べる様子を「たらふく食べる」と言うのも、
この魚の行動が由来です。

冬、産卵のために浅海にやってくるのを漁獲します。

脂肪の少ない、淡泊でクセのない白身魚です。

加えて、水分が多く鮮度が落ちやすいので、
昔から甘塩の「塩鱈」や干物「干鱈(ひだら)」で流通し、
「丸干し鱈」、「棒鱈」、「すきみ鱈」等に加工されました。

その他、卵巣「白子(しらこ)」に価値があり、
白子を持つ雄(おす)の方が雌(めす)よりも高価です。

また、すけとう鱈の卵がたらこや明太子になります。

 

【選ぶ時のポイント】

身がほのかなピンク色で透明感があるもの、
目が澄んでえらが赤いもの、
切り身の切り口の角がしっかり立っており、透明感があるものが良いです。

 

【栄養および健康への効果】

身には脂肪が少ない一方、旨味成分のイノシン酸が多いです。

また、低カロリーで良質なタンパク質が摂れ、
加えて、ダイエットのメニューに適しており、
カリウムやカルシウム等のミネラル補給にも役立ちます。

カリウムは塩分排出を促進して血圧を安定させます。

カルシウムは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を防ぐと共に、
成長ホルモンの分泌にもかかわります。

一緒に食べると良い食材は、椎茸(しいたけ)と木耳(きくらげ)。
ビタミンDを含み、カルシウムの吸収率を高め、骨や歯に沈着させます。

 

【可食部100gあたりの栄養成分含有量】

 鱈(たら)

エネルギー   77kcal
タンパク質   17.6g
脂質      0.2g
炭水化物    0.1g
カルシウム   32mg
コレステロール 58mg

 

【和食の調理のコツ】

昆布に2~3時間挟んで(はさんで)「昆布締め」にするのが定番ですが、
時間が長過ぎると身割れし、昆布の味も出過ぎて持ち味が損なわれます。

また、「鱈ちり鍋」も一般的で、アラに薄塩をして、
胃袋も肝も一緒に冬野菜との汁物に仕立てると、
ゼラチン質がとろみになって、寒い冬に暖まります。

ただ、鍋物にする場合は火が通りやすく身が崩れやすいので、
野菜を先に煮るのが良いでしょう。

真鱈の卵巣は、卵粒が大きく全体が黒いので、昆布巻きの芯等にします。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』

冬が旬の魚・3 牡蠣(かき)

【特徴・由来】

旬は3月~11月。

11月頃に身が詰まり、12月頃に香りが良くなり、
取り分け美味しい(おいしい)のは3月頃。

逆に、「Rの付かない月は牡蠣を食べるな」、
「花見過ぎたら牡蠣食うな」という諺(ことわざ)があります。

ただし、例外は後述する大型の「岩牡蠣」。

「夏牡蠣」と言われるように夏に味がよくなり、
真牡蠣(まがき・後述)と入れ替わるように市場に出回ります。

さて、牡蠣はイタボガキ科の二枚貝(左右一対の貝殻)。

殻は楕円形(だえんけい)で左右非対称。
片側は丸く、片側は平で、
丸い方の殻で岩にくっ付いて岩場に棲息(せいそく)しています。

貝塚から殻が出土する程、古くから食べられている貝で、
二枚貝の筆頭格。

養殖の歴史も古く、
日本では、1673年(延宝元年)に広島で始まっています。

なお、現在の日本では、市場に流通するのは、
「真牡蠣(まがき)」、「住之江牡蠣」、「板甫牡蠣(いたぼがき)」、
「岩牡蠣」の4種。

その中で、大半は養殖の真牡蠣です。

 

【選ぶ時のポイント】

貝の幅が広く、口がしっかり閉じているもの、
身がふっくらして、ひだの黒みが鮮明なものが良いでしょう。

また、パックの剥き身(むきみ)は、
身が厚くて液体が鮮明なもの。

で食べる場合は、
「生食用(なましょくよう)無菌牡蠣」と記されたもの。

なお、「加熱用」は、
無菌化をしていないだけで、鮮度が悪いわけではありません。

 

【栄養および健康への効果】

別名「海のミルク」。
特に、亜鉛の補給に最適です。

亜鉛の摂取により、
味覚を正常に保つ他、
インスリン合成を高めて糖尿や抜け毛の防止、
精力増強の効果があります。

牡蠣4粒(80g)で、
1日の亜鉛の所要量をほぼ賄え(まかなえ)ます。

その他、筋肉のエネルギー源となるグリコーゲン
鉄・銅・マンガン等のミネラルも含んでいます。

グリコーゲンは、
疲労回復の他、運動による筋力の効果を高めます。

なお、レモンや梅干しと一緒に食べると、
亜鉛がクエン酸に包み込まれて
体内に吸収されやすくなります。

 

下記の文献以外も、いくつかの健康関係の文献に目を通す限り、

食材の食べ合わせが良い、ということは、
大抵の場合は、消化に良い、体内に吸収されやすい、
ということを意味しているように思います。

 

【可食部分100g当たりの栄養成分の含有量】

牡蠣(かき)

エネルギー  60 kcal
タンパク質   6.6g
脂質      1.4g
炭水化物   4.7g
鉄       1.9 ㎎
亜鉛      13.2 ㎎
コレステロール 51 ㎎

 

 

【和食の調理のコツ】

牡蠣は食用にする部分はほとんど「わた」です。

そして、その美味しさとは、
身そのものの味に、海水の塩味や磯の香が加わり、
クリーミーな食感と一体になったところです。

流通する牡蠣には、
殻(から)付き剥き(むき)牡蠣があり、
剥き牡蠣には、生食用と加熱用があります。

 

剥き牡蠣

殻から取り出す場合は、
軍手等の手袋をはめ、
蓋殻(ふたがら)を上に、幅が狭い方を手前に持ち、
殻の右側中央から合わせ目にナイフ等を差し込み、貝柱を外します。

取り出した剥き身は、
大根おろし、もしくは塩分15%以内の塩水で振り洗います。

この後、生食用の場合は、
70℃位の湯にさっと通し(霜降り)、氷水に入れて水気を抜きます。

酸味と合うので、レモン等の柑橘類が良いでしょうし、
寿司だねにもなります。

 

加熱料理

鍋やご飯等、方法は色々ありますが、
加熱し過ぎると、柱とわたで食感が合わなくなるので注意です。

例えば味噌(みそ)で煮込む「土手鍋」は、

砂糖を加えた味噌を鍋の周囲に土手のように塗り、
味噌を崩しながら食べる鍋です。
十分な水分で煮込むために固くなりにくいです。

また、佃煮(つくだに)風に煮上げる場合は、

7割程度火が通ったら牡蠣を取り出し
先に煮汁だけを煮詰めるのがおすすめです。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』

冬が旬の魚・2 鰤(ぶり)

【特徴および由来】

旬は12月~2月。
寒い季節程、脂がのって美味しい(おいしい)魚です。

アジ科の青背魚(あおせざかな)で、全長1m前後。

日本沿岸を回遊し、
温かい海で産卵を終えると春から夏に北海道付近まで北上し、
秋から冬には産卵のため沿岸を南下し、
12月頃には北陸周辺で水揚げされます。

因みに、この季節になると、
シベリアからの寒気の到来により、
これより水温の高い日本海では上昇気流が盛んになって積乱雲が発達し、
雷と共に、時雨(しぐれ)や雪や霰(あられ)が降ったりします。

夏の雷とは異なり、数は少ないものの、俄かに付近に落ちるのが特徴です。

鰤が獲れる頃の雷につき、北陸ではこれを「鰤起こし」と呼び、
漁業関係者は鰤が獲れる前兆とし、季節の風物詩としてニュースにもなります。

さて、鰤は出世魚(しゅっせうお)で、

関東では小さい順に「わかし」→「いなだ」→「わらさ」、
そして「ぶり」、
関西では、「わかな」→「はまち」→「いなだ」→「ぶり」、
と言います。

西日本では正月の年取り魚として、
贈答品や雑煮、おせちに用います。

天然物の漁獲地は、北海道・富山・島根・石川・千葉等。

養殖は昭和2年に香川県ではまちの養殖が始まりました。
有名な漁獲地は、鹿児島・大分・愛媛等。

 

【選ぶ時のポイント】

目が澄んでえらが赤いもの、
切り身は弾力があり血合い肉の色が鮮やかなもの、
体の黄色い縞(しま)がハッキリしているものが良いです。

 

【栄養および健康への効果】

脂肪にはDHA、EPAが含まれており、
血合い肉には身の部分よりもビタミン・ミネラルが多彩です。

その他、ビタミンB1が糖質をエネルギーに変換して
疲労や筋肉を解消します。

また、アミノ酸のタウリンも含まれており、
コレステロールや血圧を安定させて動脈硬化を防ぎます。

なお、ニンニクやニラと一緒に食べると、
香り成分のアリシンがビタミンB1と結び付いて
疲労回復の効果が高まります。

 

【可食部分100gあたりの栄養成分含有量】

エネルギー   257kcal
タンパク質   21.4g
脂質       17.6g
炭水化物     0.3g
ビタミンB1    0.23mg
鉄         1.3mg
コレステロール   72mg

 

【和食の調理のコツ】

身に脂が多く、鮮度が落ちると脂がしつこい味に変わります。
刺身や寿司だねにするには、
「いなだ」や「わらさ」程度の大きさが、
脂肪の量が適しています。

刺身に使う場合は、
和紙に霧吹きで水を噴き掛けて鰤に乗せ、
さらにその上から塩を振ってすぐ使う「紙塩」にします。

鰤の脂が紙に吸収されて食べやすくなります。

「鰤しゃぶ」の場合は、葱(ねぎ)や水菜を使うと、
脂の多い養殖ものでもさっぱり食べられます。

「鰤大根」には、頭やカマ等のアラを使うのも良いでしょう。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』
白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』

冬が旬の魚・1 平目・鮱(ぼら)

これまで、冬至に食べると良い野菜、冬が旬の野菜について書きましたが、

続いて、この流れで、
主に鍋の具材についてあれこれ考えることを視野に入れつつ、
冬が旬の魚について書こうと思います。

 

1、調理にあたって

高度成長期以降の食の洋食化・簡便化による魚の調理の敬遠や、
途上国の需要増加による価格の高騰といった社会環境の影響により、

日本人の食卓から、魚が次第に遠のく傾向にある昨今。

その一方で、栄養価が高いことで健康増進には不可欠であり、

面倒な調理も、工夫次第では、

一切れ100円程度の輸入物の切り身を煮る場合でも、
例えば、ダシ昆布(こんぶ)を足す、塩を振って湯を通すというように、

ほんの僅かな手順を足すことで、驚く程美味しくなります。

 

魚が好きな癖に元来ものぐさい上に調理下手で、
自宅では、ほとんど刺身か焼き魚、鍋に入れる練り物位しか食べ(られ)なかった
私が言うのですから、間違いなかろうかと。

—野崎洋光先生に感謝しています。

そして、社会状況を鑑みる(かんがみる)限り、
こういう方は、案外多いのではないかと推察します。

その意味では、今の日本人にとっては、
魚は栄養・食文化の双方を潤す(うるおす)という点において、
潜在能力の塊(かたまり)のような食材でもあります。

—言い換えれば、仕事で疲れた心身を食卓で癒すための鍵と言えるでしょう。

 

2、小売店で良品を見分ける時のポイント

大体の魚について共通する点は、

色の鮮やかさ身の締まり具合重量感等、
そして、目が澄んでいることが挙げられます。

逆に、買うのを控えるべきは、
パック詰めの場合、ドリップ(組織液)が多く出ているものです。
旨味が落ちていることがその理由です。

 

3、平目(ひらめ)

 

【特徴・由来】

旬は9月~2月。
冬に脂がのり、「寒平目(かんひらめ)」とも言われるように、
1~2月が一番美味しい(おいしい)です。

主にヒラメ科ヒラメ。
北海道から九州までの沿岸の砂泥(さでい)地に棲む(すむ)、
全長80cm前後の平たい魚です。

成長するにつれて片目が片方に移動するのが特徴で、
鰈(かれい)との違いは、主に目と口にあります。

「左平目に右鰈」と言われるように、
尾を手前に立てた時に、
目が左側であれば平目、右側であれば鰈。

「大口平目、小口鰈」と言われるように、
口が大きいのが平目の特徴です。

透き通った白身が美しい魚で、
「鯛や平目の舞い踊り」と唄われる程、
昔から海の幸として重宝されていました。

ぷりぷりした歯ごたえが持ち味で、
甘みとコクがあります。

稚魚の放流や養殖も盛んで、
有名な産地は鹿児島・大分・愛媛。
中国からの輸入も増えました。

天然物では、青森の「青森ひらめ」、
山口の「笠戸ひらめ」、長崎県の「平戸ひらめおがみ」等が
有名です。

 

【選ぶ時のポイント】

目が透明でえらが赤いものが良いです。
2~3㎏が最上品。
天然物は裏が白く、養殖は黒い斑模様があります。

 

【栄養および健康への効果】

高蛋白(たんぱく)、低脂肪で、ビタミンやミネラルも豊富です。
養殖ものは脂肪が多目。

 

【和食の調理のコツ】

活け締め(いけじめ)の場合の生の美味しさは
魚の中で一番と言われ、刺身用の白身魚の代表格。

昆布締め(こんぶじめ)にする時は、
五枚おろしにした「さく」、
またはそぎ身に塩をして30分程置き、
水気を抜いて昆布で2~3時間挟みます。

塩焼きも美味しいです。

また、背びれと尻びれに接する内部は「縁側(えんがわ)」と呼ばれ、
寿司ネタ等で有名で、肝も珍重されています。

 

4、鰡、鯔、鮱(ぼら)

【特徴・由来】

旬は冬。

ボラ科で細長い魚です。
北海道以南の各地の沿岸で、内湾や河口等の汽水域に棲み、
産卵期になると外洋へ回遊します。

沿岸では数cmから50cm程の大きさですが、
大きくなると、80cm程にもなります。

成長に伴い名前の変わる出世魚(しゅっせうお)で、
小さい順に「はく」→「おぼこ」→「いな」、
そして「ぼら」となります。

さらに、大型の老成魚(ろうせいぎょ)「とど」まで。

「いなせな若者」、「おぼこ娘」、「とどのつまり」、
といった言葉の語源でもあります。

こうした由来を反映してか、
元々、神事や祭事の時によく出されためでたい魚で、
日本人の生活に深いかかわりを持って来ました。

特に関東では、出世魚に肖る(あやかる)ようにと、
お食い初め(おくいぞめ)の膳にも登場し、
昭和の初めまで高級魚でした。

卵巣を塩漬けにして乾物にしたものが、
日本三大珍味の「からすみ」
古代ギリシャやトルコの保存食であったのが、
戦国時代の天正年間に長崎に伝わりました。

なお、産地は千葉・長崎・兵庫等が有名で、
養殖は静岡・愛知・三重等。

 

【選ぶ時のポイント】

目が澄んでえらが赤く、体に張りのあるものが良いです。

 

【栄養および健康けの効果】

パントテン酸等のビタミンB群、ミネラルが豊富です。

 

【和食の調理のコツ】

水質の良い河川や外洋で回遊するものには臭みがないので、
そうした新鮮なものは刺身や「洗い」に適しています。

黒っぽい皮は剥いた(むいた)方が美しく仕上がります。

また、塩焼き・煮付け・味噌煮・鍋物・フライ・南蛮漬け等、
多様に使えます。

「からすみ」の家庭用の作り方は、
血管に針を刺して血液を絞り出して抜いた後、
塩を真っ白になる程まぶし、3週間程置きます。

次に、、薄い塩水で少しづつ水抜きし、ガラス板で挟んで成形。
焼酎や酒を塗りながら、冬の乾いた空気で乾燥させて完成。

 

 

【主要参考文献】

白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』

冬が旬の野菜・6 キャベツ

キャベツ

【特徴と由来】

冬キャベツは1月~2月、春キャベツは3月~5月。

アブラナ科で、原産地は南ヨーロッパです。

野生のものは結球しませんが、
ヨーロッパで結球タイプに改良されました。

日本には江戸時代末にオランダ経由で長崎に入り、
明治の初めに北海道や東北で栽培されるようになりました。

冬キャベツはずっしりと重く、固くて甘みがあります。
したがって、煮込みに向いています。

春キャベツは丸くて巻きが緩く内側まで緑色です。
生食に向いています。

 

【選び方のコツ】

葉の色が鮮やかで張りがあるもの、
重量感があるもの、
根元の切り口が綺麗でみずみずしく新鮮なもの、
固めに巻かれてぎっしりしているものが良いです。

 

【栄養及び健康への効果】

ビタミンCが豊富で、葉2、3枚で1日の必要量が摂れます。
また、胃の粘膜を保護するビタミンUも豊富で、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に効果を発揮します。

これらビタミンU・Cの効果により、
肝臓の機能も高まります。

さらに、イソチオシアネートやインドールは、
免疫力の強化に力を発揮します。

その他、カリウムによる利尿作用、
美肌・便秘解消にも効果があります。

豚肉と一緒に食べると、
タンパク質の消化を助け、美肌効果も期待出来ます。

 

 

【和食の調理のコツ】

生食の代表はキャベツの千切りです。
葉脈(ようみゃく)に沿って縦にはしる繊維を断ち切り、
水にさらしてパリッとさせます。

千切りを茹でて(ゆでて)、
シンプルに鰹節(かつおぶし)を載せる(のせる)
お浸しも良いでしょう。

その際、70~80℃程度の低温でゆっくり茹でると、
消化酵素のジアスターゼも失われません。

和風のロールキャベツの場合は、
昆布ダシと淡口醤油(うすくちしょうゆ)だけで
あっさり煮るのがおすすめです。

またキャベツ中心のおでんの場合は、

鍋に水・ダシ・昆布を入れ、
淡口醤油と酒で味を調えてキャベツを入れ、
茹で卵や練り物と煮ると出来上がりです。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』

冬が旬の野菜・5 小松菜・水菜

1、小松菜(こまつな)

 

【特徴および由来】

旬は11月~2月。

アブラナ科で、蕪(かぶ)を改良した青菜です。

東京では、江戸時代初期から栽培されています。
名前は産地のひとつである江戸川区小松川に因み(ちなみ)、
徳川綱吉が命名しました。
この時代は、庶民が雑煮に入れたといいます。

現在でも、関東地方で栽培が盛んです。

ほうれん草に比べると、茎(くき)が幅広く、
太くて歯ごたえがあります。

寒さに強く、霜を受ける程、
甘みが増し、葉が柔らかくなり、美味しく(おいしく)なります。

 

【選ぶ時のポイント】

葉の緑色が濃く鮮やかで、
根元から葉までピンとしているものが良いです。

 

【栄養および健康への効果】

ビタミンA・Cが豊富に含まれており、
粘膜を丈夫にし、風邪予防に効果があります。

ほうれん草に比べてカルシウムの含有量は3、4倍多く、
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に効果があります。

また、鉄分も多く、貧血対策にも適しています。

干し椎茸(しいたけ)と一緒に食べると、
ビタミンDがカルシウムの効率的な吸収を助けます。

 

 

【和食の調理のコツ】

茹で(ゆで)方が他の野菜に比べて少々手間ですが、
以下の手順を踏むと、驚く程美味しくなります。

茹でる前に15~30分水に浸け、シャキッとさせます。
次に、70~80℃の湯を用意して、小松菜の根元から1分茹で、
葉先も沈めて3分程茹でて冷水に取ります。

その他、ほうれん草と異なり、
ダシで割った醤油がしみこまないので、
シンプルに醤油を掛ける方が良いでしょう。

 

 

2、水菜(みずな)

 

【特徴・由来】

旬は12月~3月。

アブラナ科で、京都付近が原産地の京都の伝統野菜です。

別名「千筋菜(せんすじな)」。
関西以外では「京菜(きょうな)」とも呼ばれます。
京都では水と土だけで育てたことが、名前の由来です。

近年スーパーに出回るのは、水耕栽培の改良種。

本来の在来種の露地ものは、1株から茎が40~60本も密生し、
大きくなると、周囲1メートル、4㎏近くにもなります。

現在の産地は茨城がトップで、京都の他は福岡・埼玉等が有名です。

 

【栄養および健康への効果】

βカロテンやビタミンC、鉄やカルシウムを多く含みます。
風邪や貧血の対策に適しています。

 

【和食の調理のコツ】

水耕栽培の水菜は淡泊でクセがありません。
生でサラダに使う場合は、軽く塩もみすると、しんなりします。

小松菜と同じく、70~80℃の湯で2分程茹でると、
辛みが引き出せます。

 

 

【主要参考文献】

白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』
日本気象協会『季節と暮らす365日』
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
田中明/蒲池桂子『あたらしい栄養事典』