古くて新しい鍋物、その定義とは?

クッキーさん様(改変)

 

1、「鍋物」の定義

家族、友人、同僚と、大人数で鍋を突く光景は、
最早、寒い季節における日本の食卓の風物詩と言えます。

ところが、大人数で鍋を囲む風景は、
意外にも日本の伝統的なものとは言えないようです。

と、言いますのは、
こういう食べ方をするようになったのは、
実は、明治維新以降の御話。

それはさておき、
まずは、鍋物の定義を確認することとします。

ジャーナリスト等の有志の皆様が立ち上げた
全日本鍋物研究会様によれば、

色々調べたものの、割合新しい食べ方の料理につき、
今日に至るまで、それらしい定義がないようです。

そこで同会が独自に定めた定義としては、
以下の3点。

 

1、目の前に火元があること
2、具が液体に入っていること
3、みなで囲んで食べること

 

 

2、「食べ方」としての鍋物

全日本鍋物研究会様は、上記の3つの定義について以下のように記しています。

 

実は鍋研が重視したポイントが鍋物という料理の、
大袈裟(おおげさ)に言えば「民主的な性格」なのである。

偉い、偉くないの関係なく、湯気をかこみ車座になって、
じか箸(はし)なども気にせず、わいわいがやがやとつつき合う。

これぞ、日本的伝統のごった煮精神、原始民主主義ではあるまいか。
そんなこじつけがしたかっただけである。

 

ここで、鍋物の話にどうして身分だの政治だのの話が出て来るのか、と、
訝しむ(いぶかしむ)方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、驚くべきことに、

江戸時代までの食習慣からすれば、
今日の「鍋物」のような、大鍋に直箸(じかばし)を入れる食べ方
当時の身分制度や行儀作法からすれば逸脱していたのも事実のようです。

一方で、鍋物の前身となる料理は数多く存在しましたが、
「汁物」と呼ばれる御飯に添える副食という位置付けでした。

全日本鍋物研究会様が先述の3つの定義を示したのは、
こうした汁物との差別化を図る意図もあったと思います。

実は、私も、鍋物について調べることを思い立ち
江戸時代の料理についての文献を当たった際、

料理名に「〇〇鍋」と呼ばれるものが無かったことに驚いた次第で、
同時に、何から書いたものかと頭を悩ませたものでした。

しかしながら、こうして見ると、

鍋物は「食べ方」がキモだったのかと
目から鱗(うろこ)が落ちた心地です。

そう言えば、ぽん酢や忘年会シーズンの胃腸薬のCMを見ても、
例外なく鍋物の参加者が大勢で楽しそうにしていまして、

世間のイメージとはそうしたものかと。

その意味では、「一人鍋」は、
「鍋物」というよりは、「汁物」のような位置付けなのでしょう。

このように、料理としての顔と、交としての顔を併せ(あわせ)持つ「鍋物」。

手始めに、定義について記しましたが、
以降、何回かにわたって、『平成鍋物大全』の要約を中心
「鍋物」について色々と綴ろう(つづろう)と思います。

 

 

【主要参考文献】
全日本鍋物研究会『平成鍋物大全』

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