選挙と合戦用語 その2

MOON CHILD 様(改変)

 

政党本部レベルの選挙の段取に関する用語 その2

事前に取り決める戦術や作戦行動を示す用語・2
(し~は)

 

同じカテゴリーで説明が回を跨ぐ(またぐ)結果になり、大変恐縮です。

少しでも時代の実情に近付けるべく深く解釈しようと思うと、
却って(かえって)説明にまとまりが付かなくなるので
当方の力量不足で、何とも、もどかしい心地です。

 

 

出馬・御出馬(しゅつば・ごしゅつば)

身分の高い大将が出陣することを言います。

因みに(ちなみに)、
「馬」の字を使う背景として
身分の高い者しか騎乗が許されなかったことで、

前近代の日本において、
単騎の騎馬武者ではなく、
隊内でも命令系統のある組織としての騎兵部隊が存在したか否かについては、
この言葉がひとつの指標になるかもしれません。

また、現在の選挙では、実によく使われる言葉で、
立候補そのものを意味します。

 

陣触(じんぶれ)

出陣することを臣下に通達することを言います。

出陣を告げる際には色々な注意をも布告します。
小田原北条氏は旗差物・合印・軍装まで細かく指定しています。

陣触れは主君から部将に触れられ、
部将から配下の武将に告げられます。

口頭もありますが、多くは書状だそうな。

現在の選挙については、私はその内幕は分かりませんが、
やはり、本人が決断し、実際に秘書に通達するとなると、
その瞬間は劇的なシーンなのでしょうか。

とはいえ、進退が注目される人の場合は、
報道陣が四六時中張り付いている中で出馬の速報が出ることで、

当時のようなタイムラグはなさそうな印象を受けます。

 

長僉議(ながせんぎ)

長評定のことです。俗に「小田原評定」とも言います。
長々と議論して結局、結論が出ないうちに、
機会を逸して(いっして)しまうことを言います。

現在の選挙の直前に、離党や候補者乱立があると、
多分、その前にこれが起きているのかしらと想像します。

 

博奕軍(ばくちいくさ)

「勝敗は時の運」と言う言葉があります。

勝算があっても敵の謀略で敗れることもあり、
自滅と思っても決死の勇気を持って戦えば勝つこともあります。

どれ程入念に準備を整えても絶対的な結果は保障されない点
博奕と同じです。

そこで、運を天に任せて勝負することを博奕軍と言います。

さて、「勝敗は時の運」という、一見、無責任な言葉。

とはいえ、個人的には、
当時の実情に即した根拠がありそうにも思えます。

と、言いますのは、

当時の呼称で言うところ蝦夷(えみし)との山間部での戦いの戦訓を
長く引き摺(ず)ったことで、

それ以降、戦国時代の中頃までの軍隊は、
少人数同士のゲリラ戦のメンタリティが抜けなかったそうです。

これが意味するところは、

例えひとつの戦場で大人数で斬り合ったとしても、

その実態は、大名や有力な家臣の直属の装備に恵まれた精強な部隊以外は
有志の少人数の部隊の寄せ集めでして、

近代的な軍隊のようなレベルの
整然とした命令系統や厳然たる軍規が無い訳です。

したがって、一旦敗勢に陥れば、
踏み止まって態勢を立て直すのが難しかったものと想像します。

逆に言えば、少数でも精強で士気の高い部隊が死力を尽くして戦い抜いて
相手の戦意を喪失させ、
圧倒的に不利な形勢を引っ繰り返した戦も数多くある訳でして、

こうした不確実な要素は、今日の選挙で言えば、
政党の利益誘導の恩恵を受けていない数多(あまた)の浮動票の存在
それに該当するように思います。

 

挙旗(はたをあげる)

出陣のことです。

出陣して堂々と進軍する時に、
先頭の旗差(はたさし)が旗を掲げます。

その折には巻いていた旗紐(はたひも)をほどくとパラリと垂れ下がり、
行進すると旗がひらひら靡(なび)きます。

これを「旗を挙げる」と言い、
兵(軍)を起こすことを意味する言葉として使います。

現在の選挙では、昨今の乱立する野党のように、
新規の政党が結成される時によく使われる言葉です。

 

【主要参考文献】
笹間良彦『図説日本戦陣作法事典』
上山和雄『陣笠代議士の研究』
升味準之輔『日本政党史論』各巻
乃至政彦『戦国の陣形』
藤本正行『再検証長篠の戦い』

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