選挙と合戦用語 その5

松波庄九郎様(改変)

 

政党本部レベルの選挙の段取に関する用語 その5

党内での各種調整の失敗と事態の複雑化に関する用語 2

 

またしても、同じカテゴリーで回を跨ぐ(またぐ)こととなり、
大変申し訳ありません。

 

陣替(じんがえ)

布陣の場所を移し替えることを意味します。
これは合戦用語。

選挙の際には「国替え」(くにがえ)と言います。
因みに(ちなみに)、
選挙区の実質的な責任者を「国家老」(くにがろう)などと呼びます。

全国的に知名度のある候補者が、
勝てそうな選挙区で落下傘で出馬するイメージ。

 

同士軍・同士討
(どうしいくさ・どうしうち)

味方同士が何かの都合で戦い合うことを意味します。

戦を引き出すために
わざと同士討ちの演技を行うこともあり、

また、味方同士の合印がないために
間違って戦うこともありました。

現代の選挙で言えば、
同じ選挙区に同じ政党の候補者が複数名立候補するケース
これでしょうか。

 

友崩(ともくずれ)

合戦の折に一部隊が敗退すると、
それにつられて他の部隊も崩れ立つことを意味します。

敗色が濃厚になったことで、
後で勝者に言い逃れるために
抗戦を避けて戦場から逃亡するケースもありますが、

敵味方が明確な大坂夏の陣でも、

特に、世代交代で実戦慣れした兵隊の少なかった徳川方(がた)では、
退却した兵隊が後詰の部隊の陣地に逃げ込むことで
混乱が波及したそうな。

とはいえ、現在の選挙の場合は、
実際の斬り合いよりも、むしろ党内の調整の段階で、
こういうことが起こり得るのではないかと思います。

例えば、昨今のような、公示前に離党者が続出するケース
イメージしやすいかもしれません。

 

索張(なわばり)

城館を造る時、
その範囲に縄を張って、その内側に堀をめぐらしたので、
その地域を占めることを索張(縄張)と言いました。

城郭等はその縄張りによって堅固であったり
弱点を生じたりするので、
よく見極めてから行う必要がありました。

 

長篠の合戦

例え規模の小さい城であっても
その立地が交通の要衝で堅固であれば、

少数の守備兵と縄張りの防御力で
寄せ手(敵の侵攻軍)の主力部隊を釘付けに出来るので、

縄張りの担い手は、
太田道灌や山本勘助や藤堂高虎等、当時の花形の武将が多いです。

また、例えば、有名な長篠の合戦は、

武田勢が攻略にこだわった長篠城の立地は元より、

縄張りの巧みさと籠城側の善戦によって
織田・徳川の援軍到着まで持ちこたえ、

その成果として、大規模な野戦を誘発する運びとなりました。

こういう城攻めの部隊と救援軍との間で行われる野戦を、
合戦用語で後詰戦(ごづめいくさ)と言います。

後詰とは後発の部隊のことで、
攻める側の後詰は大抵は予備隊ですが、来援の側は精強な決戦部隊です。

 

『票田のトラクター』

現代の選挙では、
選挙区内での勢力図を意味するのではないかと思います。

随分昔の漫画ですが、ケニー鍋島さんの原作、前川つかささんの作画で、
若手の国会議員とその秘書の活躍を描いた
『票田のトラクター』という作品がありました。

この漫画の中で、選挙区内の各党の勢力について、
勢力が拮抗する場所も含めて、
(かなり細かい地域区分で各地区ごとに
綺麗に塗り分けられている地図が登場しました。

実際に選挙に従事する方々は、
少なくともこういう次元で票田を把握しているのかと
驚いた記憶があります。

政局が大きく動けば、
そのように色分けされたエリアの色が丸ごと塗り変わるのでしょう。

 

抜懸(ぬけがけ)

主将・部将の命令によって行動することが戦の不文律ですが、
功を焦った部将の中には、
自分の判断で奇襲攻撃を行うことがあります。

これを抜懸(駆)と言います。

味方に悪影響のない時は、時には功名と認められますが、
これによって味方を危険にさらすことが多いことで
原則としては禁じられていました。

関ケ原の徳川方の先陣争いのような
戦局とはあまり関係のない範囲での
身内同士の主導権争いもあるのですが。

現代の選挙では、
やはり党則や党の決定に背いて出馬するケース
それに当たるのではないかと思います。

先の小池百合子さんの都知事選出馬について、
当時そのような評を聴いた記憶があります。

 

【主要参考文献】
笹間良彦『図説日本戦陣作法事典』
上山和雄『陣笠代議士の研究』
升味準之輔『日本政党史論』各巻
平山優『真田信繁 幸村と呼ばれた男の真実』
二木謙一『戦史ドキュメント 長篠の戦い』
ケニー鍋島原作・前川つかさ作画『票田のトラクター』

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