選挙と合戦用語 その6

クッキー様(改変)

選挙区レベルの選挙戦の段取に関する用語

首相が政局と任期の兼ね合いで議会の解散を宣言し
選挙区ごとの候補者が決まったことで、

恐らくこうした中央での動きと並行するかたちで、
それぞれ選挙区において準備が本格化することと思います。

具体的には、選挙戦の責任者や参謀を決め、
選挙対策本部を立ち上げ、巡回ルートを決める、
といった段取が進むことを想像します。

また、選挙活動の指針として、

敵対候補の勢力が強い場合は、
籠城と言いますか、

中央の党本部から派遣された大物議員の応援と連携しつつ、
専ら(もっぱら)自分の選挙区での活動に専念することでしょう。

候補者間の勢力が拮抗し
各政党の党本部の援軍が入り乱れる選挙区は、

選挙戦における天王山―目玉の選挙区として、

まさに、騎馬・鉄砲を潤沢に抱えた主力の野戦部隊同士の激突が必至
「後詰戦(ごづめいくさ)」の様相を呈します。

こうした、公示直前までの選挙運動に入る前の段取について、
関係すると思(おぼ)しき用語を掲載します。

 

陣立(じんだて)・備え立(そなえだて)

陣を張る時に、実際に兵を配置することです。

戦国時代の中頃までは、「〇〇の陣」というのは、
兵の密集や散開といったような状態をあらわしていたのですが、

時代が下って、軍法(=戦法)が発達してからは
「〇〇の陣」(例:鶴翼の陣)というような名称
付けられました。

これを「備え立」とも言います。

ただし、あまり有用性は無かったようですが。

現代の選挙では、
雇い入れたスタッフに役割を割り振る、というようなことでしょうか。

 

陣取(じんとり)・大陣取(おおじんとり)

敵と対峙(たいじ)して陣を確保することです。
大勢で陣地を厳しく固めたものを大陣取と言います。

近年の関ケ原の発掘調査で、
徳川家康の本陣は城であった可能性があるとのことでした。
こういうのを、大陣取というのでしょう。

また、大将のいる場所―本陣を「すわり場」と言います。

なお、選挙戦で言えば、

今でこそ、有力な政党や議員は、
郊外の県でも選対本部に出来るような事務所を
県内にいくつも所有していますが、

戦前は、大物の候補でも、
臨時の選対本部として寺院等を使っていました。

自動車が普及しておらず、
都市部に人口が集中していた時代背景もあったことでしょう。

 

勢賦(勢揃・勢汰、せいぞろい)

「勢」は軍隊のことで、
勢賦とは軍勢の集団が揃(そろ)ったことです。

古来より非常の場合に軍勢が招集されたことを勢汰と言います。

現在の選挙においては、
まずは華々しい出陣式をイメージ出来るかもしれません。

また、選挙区レベルの段取の段階としては、

候補者やそのスタッフが、消防の分団や農協等、
さまざまな団体を率いる地域の顔役の方々に
選挙戦への協力を仰ぐ光景を想像します。

 

手配(てくばり)

準備を行うことです。
古くは武士が合戦に当たって諸準備・配置をすることから
来ている言葉です。

選挙戦というよりは、日常的に使われる言葉となっています。

 

手分(てわけ)

合戦の折の部署を決めることです。

目的をひとつにするものの、
それぞれの受け持ちの者に負担を分担させることです。

また、その際、攻撃・防御等を目的として責任を持って戦う場所を、
「持口(もちぐち)」と言います。

選挙戦で言えば、候補者や選挙の責任者が、
スタッフに細かい地区ごとに各種工作を割り振る光景を想像します。

 

武者屯(むしゃだまり)

軍兵が待機している場所のことです。

現在の選挙では
それほど広くはない選挙区を自動車で巡回することで、

余程の僻地でなければ
拠点を分散させるメリットを感じないのですが、

それも素人の発想かもしれません。

 

武者つかい

武者の配置し、命令を下すことです。
つまり、指揮。

現在の選挙戦では、
スタッフを配置し、
各々(おのおの)に候補者の巡回のサポートや
備品の調達等の指示を出す光景を想像します。

 

【主要参考文献】

笹間良彦『図説日本戦陣作法事典』
上山和雄『陣笠代議士の研究』
升味準之輔『日本政党史論』各巻
乃至政彦『戦国の陣形』

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