選挙と合戦用語 その7

hananana様(改変)

 

選挙区レベルの運動に関する用語 1
運動戦術に関する用語 1

 

はじめに

選挙区ごとの立候補者が公示で発表され
選挙戦に必要な運動員と備品が手配されたことで、

いよいよ有権者にとっての選挙期間という枠組みの中での
選挙運動が始まります。

数ある合戦用語の中でも
選挙の花形である遊説や選挙期間中の運動戦術に関連しそうな用語が
特に多いことで、

まずは、選挙期間中の運動戦術に関連しそうな合戦用語
紹介します。

なお、残念ながら、このカテゴリーも回を跨ぐ(またぐ)こととなります。
毎度恐縮です。

 

相備(あいぞなえ)

味方の備え(そなえ:部隊そのもの、戦闘隊形、武具)と協力して、
互いに応援したり応援されることが可能な備えのことです。

戦争における常套(じょうとう)戦術のひとつとして、
ひとつの敵に対して複数の包囲から攻め込む戦い方があります。

敵の反撃の重点を分散させ、
場合によっては弱点を突くことが出来るからです。

逆に、守る場合は味方の死角を別の友軍が守るという具合に、
自軍の総合的な戦力を高める効果があります。

 

関ケ原の様子と、さる選挙区の模様

一例として、関ケ原の戦いの前半戦は、
東軍の前衛部隊の福島や黒田といった諸隊がこれを巧く行い
逆に連携を欠いた西軍に対して押し気味だったそうな。

現代の選挙戦で言えば、余裕のある候補者の行う、
選挙区を越えた応援の遊説に当たるのでしょうか。

因みに(ちなみに)、

以前、私が住んでいた市の選挙区は
当時は与党のさる候補者の地盤の固いところでして、

選挙期間中、その候補者は他の選挙区の遊説に専念し、
地元には一度も帰らなかった、

ということがありました。

 

 

赤備(あかぞなえ)

甲冑から旗指物までを赤色で統一した部隊の備えのことです。

武田家の飯富虎昌や徳川の井伊直政の部隊が有名です。

戦場で特に目立つことで、
武名を誇る代わりに被害担当(敵を引き付ける)の役割もある、
という説明を読んだ記憶があります。

 

戦国時代の実相

また、甲冑を部隊ごとに色分けする理由は、
元々は、五行思想に即した縁起を担いだものでした。

まず、大名直属の部隊が状況に応じて縁起の良い色を決め、
配下の部隊はそれよりは劣る色を、という具合です。

戦国の初期は、陣形もこういう発想で組まれたそうで、
その意味では、呪術的な意味合いが強かった時代と言えます。

また、陣笠や甲冑といった防具は、

足軽・中間(ちゅうげん)・かせ者、といった、
末端の兵隊レベルでは雑多で不統一であったのが実情の模様。

さらに、幟(のぼり)は一定の身分の者しか立てなかったようです。

 

時代や文化等によって異なる、それぞれの色の意味

それぞれの色の意味するところは、
時代や文化等の諸事情によって異なるようです。

例えば、日本の国旗に使われる日章旗の赤色については、

太陽信仰だとか、それと無縁ではなさそうな天下統一だとか、
諸説こそあるものの、

確定的なものはないそうな。

日の丸の旗自体が、
国旗に指定される以前から
さまざまな場面で長く使われたことに起因するのでしょう。

そうかと言えば、フランスの国旗の青・白・赤は「自由・平等・博愛」。

こういう具合で、色にはそれぞれ意味があり、

ヨーロッパの国旗の色は、そうした意味の組み合わせとのことです。
確か、王政の絶対主義に代わる
19世紀以降の国民国家時代の観念だと記憶します。

 

政党・候補者のシンボル・カラー

現代の選挙では、例えば政党がイメージカラーとして使います。

例えば、有名なものでは、アメリカの大統領では、
赤が共和党・青が民主党という所謂(いわゆる)「赤い州・青い州」。

政党ごとに色が決まったのはそれ程古い話ではなく、2000年以降の模様。

また、特に新しいものとしては、先の韓国の大統領選もそうですし、
都民ファーストの会が先の都知事選以降、緑を意図的に使っています。

 

 

位詰(くらいづめ)

優勢な軍隊がその威力を発揮して敵を圧倒することです。
主に、威圧して敵を脅かす(おびやかす)ような行為。

例えば、よく行われた戦法としては、

戦列の全面に騎馬を押し出し、
相手を威嚇(いかく)して戦列を乱させるというものです。

また、有名なものでは、長篠の戦いでは、

織田勢の全軍が到着して布陣を終え
馬防柵(ばぼうさく)を秘密裡(ひみつり)に立てた日の夜に、

空前の数の鉄砲による、空砲の一斉射撃を行いました。

相手を徴発して決戦を促す(うながす)意図もあったのでしょうが。

 

強硬策を示す現代版「位詰」

さて、この「位詰」、
当然、似たようなことは、今でも行われています。

戦国時代を含めた各種戦争は元より、将棋やサッカー等でも、

手持ちの戦力の優位性(主に、数や質)を活かして
自軍を積極的に前に押し出すような戦い方がそれに当たりますし、

商売でも、仕入れを多く、割引率を高くして店頭で羽振り良く見せたり、
相場で注文を多く出して、反対の注文を出す側を威嚇したりします。

 

経済強者の選挙戦術

そのような中、現代の選挙戦では、

運動員の数や資金力にモノを言わせて
敵対候補者よりも多く広告を打ち頻繁に遊説にまわる、
といったことでしょうか。

例えば、先のアメリカ大統領選では、
民主党が富裕な保守層を多く取り込み、

共和党の30倍もの選挙資金を投じて
芸能人を多く動員するなどの大規模な選挙活動を行ったことで、

CNNの「C」はクリントンの「C」だとか
揶揄(やゆ)されていたのを思い出しました。

 

 

【主要参考文献】
笹間良彦『図説日本戦陣作法事典』
上山和雄『陣笠代議士の研究』
升味準之輔『日本政党史論』各巻
二木謙一『戦史ドキュメント 長篠の戦い』
小和田哲男『軍師・参謀―戦国時代の演出者たち』
笠谷和比古『関ヶ原合戦と大坂の陣』

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