選挙と合戦用語 その8

KOU2301様(改変)

 

選挙区レベルの運動に関する用語 1
運動戦術に関する用語 2

 

軍神(ぐんしん)

戦に勝つために祈りの対象とする神のことです。

軍神という概念は、
少なくとも平家が台頭する時代からありましたが、

室町時代頃からその数が増え、
「九万九千の軍神」「九万八千の軍神」というような
言い方をしました。

 

信長と謙信と神様

織田信長が、桶狭間で今川の本陣に斬り込む前に、
戦勝祈願のために熱田神宮を参拝しています。

この神社は、
三種の神器のひとつである草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)を
祀る(まつる)ことで、

当人の信心はともかく、軍神に祈る一例に見受けます。

もっとも、防諜(ぼうちょう:スパイ対策)目的で
単騎同然で城を飛び出したことで、

落伍した(遅れてはぐれた)兵隊の合流を待つ意図もあったそうですが。

その一方で、上杉謙信の毘沙門天の信仰の場合は
戦陣に自分の信仰を持ち込んでおり、

こういうのを「軍神」と呼ぶのか否かは、
識者の意見を伺(うかが)いたいと思います。

 

選挙の神様

昔から「選挙の神様」という言葉がありますが、

言葉の意味は選挙巧者で、実在の人物を指します。

例えば、戦前では原敬敬や安達謙蔵等、
政党内閣制が定着し始めた大正時代以降の政治家達。

その意味では、昨今の選挙で言えば、
小泉純一郎氏や小沢一郎氏等のような政治家も該当しそうに思えます。

もっとも、信仰とは程遠い気もしますが。

 

鎬を削る(しのぎをけずる)

鎬(しのぎ)とは、刀身の棟と刃との中間に位置し、
断面図で見た時に切る部分に垂直に広がる部分のことです。

太刀(たち)打ち戦で、

刃(やいば)を打ち合わせ、鍔(つば)競(せ)り合いをし、
刀剣の鎬が削れる程の激しい戦い方のことです。

転じて、太刀打ち戦に限らず、
激しい競合(せりあい)のことを指します。

なお、これに因んで(ちなんで)、

単に合戦や戦い合う行為を、
「せり合」(せりあい)・「せり合合戦」(せりあいかっせん)
言います。

現代の選挙戦やその他の政治運動では、

例えば、街頭演説の際に、
過去の政党の離合集散等により候補者同士で遺恨がある場合、

自分の公約の説明はそこそこに
相手の敵対候補者を強く罵る(ののしる)行為でしょうか。

 

城乗(しろのり)

城攻めして城を落とすことです。

城壁を乗り越えたり、
城門を破った後で、馬を乗り込んで城を占領すること
起因する言葉です。

現在の選挙では、選挙区を国や城と呼ぶことで、

与野党交代の機運に加え、

評判の良い新人や、実績のある落下傘候補者の登場、
票田の取りまとめや政党本部の支持の取り付けの成功、

一方では、現職側の不祥事や失政、各種調整の失敗により、

「城」の主が交代する光景を想像します。

近年では、個人的な意見としては、
民主党が与党になった選挙が、この「城乗」のイメージ。

 

取合・地取合・坪戦
(とりあい・じとりあい・つぼいくさ)

合戦場を退却せずに確保することを「芝を踏まえる」と言います。
そして、その合戦場を互いに占領しようとすること
「取合」と言います。

 

桶狭間と川中島

例えば、信長が桶狭間で行ったような、
兵力で劣る側が大将首に狙いを定める戦い方とは異なり、

武田信玄が川中島で行ったような、謂(い)わば面的な支配であり、

どれだけの犠牲を払ってでも戦場に居座り、
その地域での勢力拡大を狙う戦い方です。

 

米大統領選挙における現職の戦い方

現代の選挙で言えば、
例えば、アメリカの大統領選挙の場合、

現職の候補者は、二期目の出馬に際して、

政策的な実績をアピールすべく
選挙の争点の適度な拡大を狙います。

これにより幅広い層からの集票を見込む訳で、
「地取合」に当たろうかと思います。

対して、新人の側は、
自分の得意分野と相手の失政・不祥事に争点を絞ろうとする訳で、

自身のライバルとの差別化は元より、
敵対候補のイメージ・ダウン
それによって発生する不支持者の取り込みを狙います。

この辺りのせめぎ合いは、
選挙戦の醍醐味(だいごみ)のひとつと言えます。

 

 

【主要参考文献】
笹間良彦『図説日本戦陣作法事典』
上山和雄『陣笠代議士の研究』
升味準之輔『日本政党史論』各巻

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