日本人と箸(はし)・椀(わん)に対する意識

acworks様(改変)

はじめに

鍋物の話に事寄せて、その前提としての御話。

鍋物の醍醐味である大人数で大きな鍋を突く(つつく)という食べ方は、
明治時代以降に普及した食べ方です。

それでは、それ以前はどのような食べ方だったでのしょうか。

 

1、箸や椀を神聖視した日本人

まず、日本人は唇(くちびる)に触れるものについて非常に敏感です。

そして、箸(はし)や飯茶碗(めしぢゃわん)、
湯呑(ゆのみ)等、銘々(めいめい)独自のものを持っており、

多くの家庭は、家族といえども共有しません。

こういう考え方を、物の本では「属人主義」と言います。

そして、この「属人主義」が日本社会で根強かった理由のひとつに、
箸が神事に供え(そなえ)られていたことが挙げられます。

神事に供える箸や椀は、白木のもの、
そして、器に至っては、土器(かわらけ)と呼ばれる
釉薬(ゆうやく)の掛かっていない素焼き(すやき)のものを出すのが、
最高の贅沢でした。

つまり、ある時期までの日本人は、
箸や椀を清らかな道具として特別視していたのです。

このような、神仏がかかわる物の考え方や習慣は中々変わりません。
それ自体が、生活規範のような性格を帯びて来るからです。

そして、この思想の裏付けを持つ習慣ですが、
例えば箸については、

『古事記』の時代には、使った箸を川に流す話があり、
時代が下っても、戦国時代辺りの茶会で、
亭主が客人の箸を削る習慣があったといいます。

 

2、江戸時代の生活必需品・箱膳(はこぜん)

注1:『台東区立下町風俗資料館図録』p27より。

 

さらに、飯茶碗や汁椀をまとめる道具として、
18世紀には箱膳(はこぜん)が登場します。

箱膳は、文字通り、箱と膳のふたつの機能があります。

まず、食事以外の時間は、として、各々が使う飯茶碗や汁茶碗等を入れておきます。
そして、食事の際には、箱を引っ繰り返して膳として使う訳です。

さらに、食べ終わると飯茶碗・汁椀等に湯を注ぎ(そそぎ)、
漬物等で食器を綺麗にして湯も飲むという無駄のなさ。
―もっとも、水の便が悪いことに起因する苦肉の策なのかもしれませんが。

最後に、自分の布巾で水気をぬぐうと箱の中に収め(おさめ)、
蓋(ふた)を元に返して、各自で膳棚(ぜんだな)に戻して食事を終えます。

言い換えれば、
昔から、大鍋で作る鍋物の料理は数多(あまた)あっても、

今日の鍋物を囲む時のように
各自で鍋から箸や散蓮華(ちりれんげ=れんげ)で食べたい分だけを取るのではなく、

必ず、鍋から箱膳の各自の椀―銘々膳(めいめいぜん)に装う(よそう)人がいる、
という点が、非常に重要な訳です

そして、この「装う人」は、
普通の家族では母親等の女手になるのでしょうが、

富裕層の家庭では、住み込みのお手伝いさんだったりしまして、
この方々は、家族の食事を手配した後で、自分達も食事を取ります。

つまり、食事を取るのに時間差が生じるので、
一緒に卓を囲むことが出来ない訳です。

 

3、日本人の洋風化とちゃぶ台の登場

注2:『台東区立下町風俗資料館図録』p13より。

 

ですが、明治時代も半ばから後半頃になると、この箱膳が廃れ(すたれ)、
代わりに、「ちゃぶ台」が登場します。

因みに、「ちゃぶ」は中国語の「卓袱」(cho-fu:食事)から来た言葉。
また、「チャブ屋」は幕末から明治初期の開港場(註)に盛んに出店された
外国人相手の料理店のことで、
この言葉は、同時に料理人も意味します。

ちゃぶ台は高度成長期以降はダイニング形式のテーブルに押される運命にありますが、
長方形のタイプは、現在も単身世帯や外食等で現役です。

「ちゃぶ台」の普及が意味するところは、

江戸時代の段階では当時は珍しかった
大勢で卓を囲む中国の卓袱(しっぽく)料理や洋風化の影響が、
大体この頃から一般家庭に及び始めたということです。

因みに(ちなみに)、割箸(わりばし)の普及も大体この前後で、19世紀以降御話。

逆に言えば、何も食文化に限ったことではないのですが、

明治維新当初、生活習慣の洋風化の直接的な影響を受けたのは、
都市部の富裕層が中心でした。

例えば、頭髪については、維新政府の発足後、早々に断髪令が出たものの、
実際に農村の人々が髷(まげ)を結うのを止めたのは明治10年代の後半以降の話。
服装に至っては、庶民が洋装を始めたのは大正時代以降のことです。

そして、一般家庭におけるちゃぶ台の普及は、
こうした居住地域や所得の差異に起因する洋風化のタイム・ラグと
密接な関係にあります。

註)幕末の日米修好通商条約により、
対外貿易は開港場(神奈川・「箱」館・長崎・新潟・兵庫―後に神戸)に制限されていました。

 

4、現在における日本人と箸・椀、そして鍋物

現在における日本人の箸や碗の扱いについては、

金属製のスプーンやフォークを使うカレー・ライス等の洋食の普及は元より、
科学技術の発展や環境に配慮する意識の拡大によって
随分変わって来たように思います。

例えば、液体洗剤によって物理的な食器の汚れが取れるというのは常識ですし、
箸に至っては、最近は職場の社食どころか、
外食でもプラスチックの箸や椀等を共用するところが増えました。

割箸にする材木は廃材同然のものだそうですが、
それでも今の考え方にそぐわないようです。

その一方で、先述の通り、家族の中では箸や食器を共有しなかったり、

それどころか、自分のマグカップを職場に持ち込む、という光景も
少なからず見られます。

―もっとも、洗い方が雑で使う気になれない、というケースもあるかもしれませんが。

とはいえ、日本人の箸や食器に関する意識は、
今以って(いまもって)、新旧の意識が混在している訳ですが、

 

その流れで言えば、寒い季節に大人数で囲む鍋物とは、

日本人の箸・食器に対する新旧の意識が交錯する、
まさにその結節点としての意味を持つ革新的な食文化であったと言えます。

 

余談 資料館の図録

注3:大阪市立住まいのミュージアム『住まいのかたち 暮らしのならい』p76より。
この図録は秀逸ですが、製作に平凡社が関与しているのが大きいのかもしれません。

 

余談ながら、昔の人々の生活について調べる際、
意外に重宝するのが、この種の資料館の図録です。

無論、資料館を直に来訪して、
民具や装束(しょうぞく)等の実物等を見るのが実感が沸くので
おすすめなのですが、

調べ物をする時に座右で何度も見直したり
自宅で時間を気にせずゆっくり眺めるとなると、

文献の出番となります。

その折、
書店に置かれている図録よりも、資料館の発行する図録の方が、
内容がまとまっていて真に迫っているように思えるケースが
少なからずあります。

また、それ程高い買い物でもありませんので、
興味のある方は、記憶の片隅にでも止めておくことをおすすめします。

例えば、台東区立下町風俗資料館の図録の他にも、
大阪くらしの今昔館(大阪市立住まいミュージアム)の図録
『住まいのかたち 暮らしのならい』等も、写真や説明が充実しています。

 

【主要参考文献】
全日本鍋物研究会『平成鍋物大全』
熊倉功夫『日本料理の歴史』
台東区立下町風俗資料館『台東区立下町風俗資料館図録』
槌田滿文『明治大正風俗語典』
池上良太『図解 日本の装束』
河鰭実英『日本服飾史辞典』

古くて新しい鍋物、その定義とは?

クッキーさん様(改変)

 

1、「鍋物」の定義

家族、友人、同僚と、大人数で鍋を突く光景は、
最早、寒い季節における日本の食卓の風物詩と言えます。

ところが、大人数で鍋を囲む風景は、
意外にも日本の伝統的なものとは言えないようです。

と、言いますのは、
こういう食べ方をするようになったのは、
実は、明治維新以降の御話。

それはさておき、
まずは、鍋物の定義を確認することとします。

ジャーナリスト等の有志の皆様が立ち上げた
全日本鍋物研究会様によれば、

色々調べたものの、割合新しい食べ方の料理につき、
今日に至るまで、それらしい定義がないようです。

そこで同会が独自に定めた定義としては、
以下の3点。

 

1、目の前に火元があること
2、具が液体に入っていること
3、みなで囲んで食べること

 

 

2、「食べ方」としての鍋物

全日本鍋物研究会様は、上記の3つの定義について以下のように記しています。

 

実は鍋研が重視したポイントが鍋物という料理の、
大袈裟(おおげさ)に言えば「民主的な性格」なのである。

偉い、偉くないの関係なく、湯気をかこみ車座になって、
じか箸(はし)なども気にせず、わいわいがやがやとつつき合う。

これぞ、日本的伝統のごった煮精神、原始民主主義ではあるまいか。
そんなこじつけがしたかっただけである。

 

ここで、鍋物の話にどうして身分だの政治だのの話が出て来るのか、と、
訝しむ(いぶかしむ)方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、驚くべきことに、

江戸時代までの食習慣からすれば、
今日の「鍋物」のような、大鍋に直箸(じかばし)を入れる食べ方
当時の身分制度や行儀作法からすれば逸脱していたのも事実のようです。

一方で、鍋物の前身となる料理は数多く存在しましたが、
「汁物」と呼ばれる御飯に添える副食という位置付けでした。

全日本鍋物研究会様が先述の3つの定義を示したのは、
こうした汁物との差別化を図る意図もあったと思います。

実は、私も、鍋物について調べることを思い立ち
江戸時代の料理についての文献を当たった際、

料理名に「〇〇鍋」と呼ばれるものが無かったことに驚いた次第で、
同時に、何から書いたものかと頭を悩ませたものでした。

しかしながら、こうして見ると、

鍋物は「食べ方」がキモだったのかと
目から鱗(うろこ)が落ちた心地です。

そう言えば、ぽん酢や忘年会シーズンの胃腸薬のCMを見ても、
例外なく鍋物の参加者が大勢で楽しそうにしていまして、

世間のイメージとはそうしたものかと。

その意味では、「一人鍋」は、
「鍋物」というよりは、「汁物」のような位置付けなのでしょう。

このように、料理としての顔と、交としての顔を併せ(あわせ)持つ「鍋物」。

手始めに、定義について記しましたが、
以降、何回かにわたって、『平成鍋物大全』の要約を中心
「鍋物」について色々と綴ろう(つづろう)と思います。

 

 

【主要参考文献】
全日本鍋物研究会『平成鍋物大全』

掃除の基本・5 エタノール

 

1、エタノールの性質と掃除における効果

エタノールには、優れた除菌・消臭効果があるので、
特に衛生面に配慮すべきキッチンの掃除に活躍します。

また、油を溶かす力が強いので、
油汚れ、手垢(てあか)や皮脂等の汚れを落とすのに効果的です。

さて、エタノールは、エチル・アルコールと呼ばれる、
強い消毒・除菌力を持つ液体。

医療の現場で使われているので、人体にも安全です。

エタノールには、消毒用無水2種類があります。

80%前後の水溶液にすると、
最も殺菌・消毒作用が高くなります。

消毒用エタノールは最初から薄めてあるので、
そのまま使えて便利です。

こういう手軽さもあってか、
最近では、学校や職場、大型小売店等でも、

この消毒用エタノールが、
冬場に風邪やインフルエンザの伝染対策として
入り口に置かれるようになりました。

なお、薬局で販売されていますが、
目立たない売り場に置かれていることが多いので
店員さんに尋ねると良いでしょう。

 

2、油汚れに対する洗浄効果

油分に浸透し、汚れを剥離(はくり)させます。

具体的な対処方法としては、

手垢や油汚れが気になる部分については、
汚れた箇所にスプレーして雑巾で拭きます。

また、細かい部分を拭く(ふく)時は、
雑巾にエタノールを少し付けて拭きます。

リモコンのボタンの隙間等は、
エタノールを綿棒に付けて拭くと効果的です。

 

3、除菌効果

カビや悪習の防止に効果的です。

したがって、調理器具や食器の消毒、
バス・ルームや洗面所、押し入れやクローゼットの中等の
カビ予防等に役立ちます。

具体的には、掃除の後に、
スプレーボトルで一拭きしておくと、効果的です。

 

4、注意事項・1 ~可燃性・揮発性

今まで触れた薬品の中で、一番危険な薬品です。

特に注意すべき点は、可燃性で揮発性が高いことです。
つまり、燃えやすく蒸発しやすい性質です。

したがって、その対処方法としては、

引火しやすいので、
ガスレンジ等の近くには絶対に置かないようにして下さい。

また、保管する時は、
直射日光の当たらない、涼しい場所にするべきです。

さらには、容器を移し換えて使う場合は、
遮光ガラスで出来た瓶(ビン)を使うようにしましょう。

実際、売られている商品の容器も、遮光性のあるものです。

 

5、注意事項・2 ~塗装を剥がす副作用に注意

重曹等とは異なり、
溶解力を持つため、ニスやラッカーを剥がし(はがし)ます。

また、皮製品やスチール製品を変色させることがあるため、
こうしたものには使用は控えるべきです。

 

 

【主要参考文献】
日本ハウスクリーニング協会『かんたんナチュラルおそうじ術』

掃除の基本・4 石鹸(せっけん)

makamuki0様(改変)

 

1、石鹸の効果と汚れを落とす仕組みの概要

石鹸はさまざまな汚れに効果的ですが、特に強いのが油汚れ。
アルカリ性で、酸性の油汚れを分解しやすくします。

石鹸は油脂とアルカリから作られる界面活性剤の一種で、
汚れを浮き上がらせる性質があります。

その仕組みですが、

まず、主成分である界面活性剤は、
水と仲良くなる成分(親水基)と油と仲良くなる成分(親油基)
双方を含んでいます。

そして、これらがどのように働くかと言いますと、

親油基油汚れに吸い付きます。
さらに、界面活性剤が汚れを取り囲み、
親水基の力で汚れを水中に分解させます。

その際、決め手になるのは泡立ちです。

空気を十分に含んだ細かい泡が立っていると、
石鹸の成分がしっかりと汚れを吸収します。

目の粗いスポンジや、泡スプレー・ボトルを使うと効果的です。

 

2、用途・形状

なお、石鹸には台所用・住居用・洗濯用等、色々ありますが、
どれも基本成分は一緒です。

中でも、台所用ものの安全基準が一番厳しいですが、
台所用が1本あれば、掃除には事足ります。

また、形状は固形・液体・粉末がありますが、
使いやすいのは、泡立ちの良い液体石鹸です。

 

3、皿洗い以外にも使える石鹸

皿洗いの他にも、エアコンのフィルター、キッチンのガスレンジ、
五徳や受け皿、換気扇の部品等、水洗い出来るものに
幅広く使えます。

また、重曹(じゅうそう)と同じアルカリ性につき、
手垢(てあか)や皮脂等の酸性の汚れを綺麗に落としてくれます。

特にコンロの汚れは、部屋のクロスの汚れ等とは違い、
野菜くずや油分等、色々なものが混ざっていることで、
中々、重曹水(先の記事参照)だけでは落とせません。

したがって、重曹水を多用して高価な液体石鹸の量の節約を考えるとしても、
やはり、ある程度の量の液体石鹸を常備しておくことをおすすめします。

家具や家電製品に付いた手垢、壁・床についた皮脂汚れ等は、
液体石鹸を濡らした雑巾や掃除用のクロスに付けて、
水拭き(みずぶき)にします。

さらに、水で絞った雑巾で水拭き、
最後に乾拭き(からぶき)をします。

なお、大きい油汚れの場合は、
そぎ取れる部分はボロ布やヘラで除去します。

 

4、純石鹸

純石鹸分だけで出来た石鹸は
合成洗剤に比べると手肌に優しく、水に流しても素早く分解されます。

排水された石鹸分は、微生物に分解され小魚のエサになるので、
河川や海を汚しません。

合成界面活性剤が含まれた「複合石鹸」と「純石鹸」との違いは、
商品のパッケージに記載されている成分表示で見分けます。

当該の欄に「純石鹸分」と記されていれば、純石鹸です。

 

 

【主要参考文献】
日本ハウスクリーニング協会『かんたんナチュラルおそうじ術』

掃除の基本・3 クエン酸

1、掃除におけるクエン酸の働き

クエン酸は、水垢(あか)・石鹸(せっけん)のカス・アンモニア(トイレの臭気)、
といった、アルカリ性の汚れを落とす薬剤です。

レモンや梅干し等に使われる有機酸の一種で、

白くて顆粒(かりゅう)状で無臭ですが
舐める(なめる)と酸味があります。ただし、舐めて良いのは食用のみ。

サプリメントの成分としても、よく使われます。

 

2、入手方法および代用品

日本薬局方(にほんやっきょくほう・厚生労働省の定めた医薬品の規格基準書)
に基づくクエン酸は薬局で売られています。

清掃用・洗濯用はインターネットの通販となります。

また、クエン酸と成分が似ている酢(調味料の入った寿司酢以外)でも
代用出来ますが、
その際、水で5~6倍に薄めます。

穀物酢・米酢・純米酢・リンゴ酢等ありますが、効果はほぼ同じです。

 

3、汚れが出来る過程と中和・溶解・洗浄作用

バスルームや洗面所には、水栓金具等の周囲に、
白い汚れがこびり付いていることがあります。

これは、水の中に含まれるカルシウム石鹸と人間の皮膚に含まれる脂肪酸
反応して出来る汚れです。

また、清潔な水でも、
時間が経つと水中のカルシウムがこびりついて、水垢になります。
例えば、洗面器以外にも、洗濯機、食器洗い機・コーヒー・メーカーの中もそうです。

こうしたアルカリ性で固形化した汚れを、
酸性のクエン酸で中和・溶解させて落とす訳です。

なお、洗面器やトイレを掃除する時は、

それらの汚れている箇所に、
後述するクエン酸水を馴染ませた(なじませた)湿布やトイレット・ペーパー等を
1時間程度当てて汚れを解し(ほぐし)ます。

 

4、クエン酸の使い方

クエン酸は、そのまま粉末で使うか、水に溶かしてそのまま使うかの、
どちらかになります。

残念ながら、水に溶けることで、
重曹(じゅうそう)のようなクレンザー効果はありませんが、
水垢等の汚れに直接掛けて、こすり洗いが出来ます。

また、フローリングの床の拭き掃除の時にも使えます。

 

【クエン酸水の作り方】

水400gにクエン酸小匙(さじ)2杯を入れ、よく溶かします。

スプレー・ボトルに入れる場合は、重曹と同じく、
長く使わないと、粉が乾燥して、噴射口が詰まるので注意です。

 

5、取り扱い注意事項

市販のアルカリ洗剤にクエン酸を混ぜるのは危険ですので控えて下さい。
洗浄力をダウンさせる可能性もあります。

また、塩素系の洗剤と混ぜると、有毒ガスを発生させます。

確かに、重曹にクエン酸を加えると、二酸化炭素の泡が発生し、
強力な力で落とすことが出来るのも理屈ですが。

個人的な経験としては、

汚れのしつこい便器の洗浄ですら、
酸性への対処とアルカリ性への対処を時間をおいて交互に何度か繰り返すことでも、
かなり綺麗になります。

まずは、こういう安全策で様子を見ることをおすすめします。

なお、使用期限ですが、

クエン酸は高温多湿を嫌うことで、
密閉容器に入れて冷暗所で保管すれば、2、3年は持ちます。

40℃以上の高温になると、固まることがあります。

 

【主要参考文献】
日本ハウスクリーニング協会『かんたんナチュラルおそうじ術』

掃除の基本・2 重曹(じゅうそう)

はじめに

前回の記事では、汚れの性質の分類とその対策の概要について触れましたが、
特に面倒なのは、やはり、薬剤を使わないと落ちない汚れです。

しかしながら、薬剤にも色々あります。

特に、効き目の強いものや用途に合わないものを使うと、
床や壁等を傷めて逆効果になる恐れがあるので注意が必要です。

そこで、以降何回かは、
手頃な値段で入手可能で、割合副作用が弱く汎用性の高い薬剤を、
いくつか紹介しようと思います。

 

【掃除用の薬剤選びのポイント】

薬剤を選ぶ際には、
以下のような点に注目すべきです。

1、まず、大抵の薬剤は油汚れを落とす効果があります。
  言い換えれば、汚れの大半は油に起因するものです。

2、油汚れの洗浄効果の他、pH(ペーハー)や副作用、
  薬剤に応じた性質があります。

3、その他、掃除以外の用途に使えるものもありますし、
  一方では、薬剤の代用として調味料が使えるケースもあります。

4、家庭用の掃除の薬剤につき、
  それ程危険なものはありませんが、
  念のため、注意事項の遵守を御願いします。

以上の点を睨み(にらみ)つつ、用途に応じるかたちで、

金銭的にも収納スペースの点でも、
効果的で無駄のない薬剤を選択・使用しましょう。

 

1、重曹の効果とは?

恐らく、手頃な薬剤の筆頭格と言うべきものが、重曹(じゅうそう)
恥ずかしながら、私もこれを知ったのは最近ですが、非常に重宝します。

食用(後述)の場合、
ドラッグ・ストアでパウダー状のものが、1㎏400円前後で販売されています。

別名:ベーキング・ソーダー。科学用語では、炭酸水素ナトリウム

酸性の油汚れを中和させ、落としやすくさせる薬剤です。

また、粒子が細かく水に少しずつ溶けるので、
穏やかな研磨(けんま)作用があります。

さらには、汚れや臭いを吸着する性質もあるので、
そのまま蓋(ふた)の空いた瓶(びん)等の容器に入れて
脱臭剤として使うことも出来ます。

その際、2ヶ月程度は消臭の効果があり、使用後は掃除に再利用できます。

また、重曹は、古くから、
掃除は元より、消化を助ける胃薬としても使用されています。

また、天然成分で出来ていることで、
人体に優しく、掃除に使って水に流しても川や海を汚しません。

 

2、中和作用

重曹は弱アルカリ性につき、
酸性の汚れを中和して、水溶性にする働きがあります。

油汚れの他には、手垢(あか)や皮脂等も酸性の汚れです。

したがって、重曹水を換気扇や家電等にスプレーしてから拭き掃除をすると、
非常に効果的です。

 

【重曹水】

水500mlに重曹大匙(さじ)2杯を混ぜます。
重曹が水に溶ける限度は8%につき、この範囲で収めます。

また、しつこい油汚れの場合は、水温を上げることで対応します。
拭き掃除であれば、40~45℃、付け置きれあれば60℃前後。

また、スプレー・ボトルに入れて長期間保存すると噴射口が固まるので、
注意が必要です。

 

【重曹水の効果的な使用例】

また、個人的な意見ですが、
非常にコスト・パフォーマンスに優れています。

1㎏400円程度の商品につき、
スプレー・ボトル1杯分のコストはタダのようなものです。

残念ながら、液体石鹸程の即効性や洗浄高価はありませんが、
当然無価値ということはありません。

例えば、しつこい油汚れを落としたいが、高価な液体石鹸も節約したい場合、
汚れに対して重曹水を撒布して少し放置すると、非常に効果的です。

謂わば(いわば)、戦争でいうところの、
敵陣のトラップや遮蔽物を除いて攻撃部隊の進路を確保する工兵

野球でいうところの、選球眼があり送りバントの巧い2番打者
といった補助的な役割を果たします。

したがって、しつこい油汚れを落としたい場合、

まずは重曹水を何度も撒いて油の塊を出来るだけ除去し、
その後、締めとして液体石鹸を使うのが効率的な方法ではないかと思います。

 

3、研磨作用

細かい粒子でしつこい汚れを落とします。

穏やかな研磨作用なので、
対象の表面を傷付けることなく、汚れだけを落とします。

例えば、プラスチックに使っても、
傷が付くことはありません。

 

 

【重曹のペースト】

壁面や凹凸のある場所の汚れを取る時等に使います。

水1:重曹2~3が基本。
重曹に少しづつ水を加えながら作ります。

乾燥すると固まるので、作ったらすぐ使います。

特に、日本海側の晩秋から冬は悪天候の日が多く湿度が高いので、

換気を怠る(おこたる)と窓ガラスが結露を起こし、
すぐにクロスやカーテンにカビが生えます。

私もこれで痛い目を見ました。

こういう場合に重宝するのが、この重曹ペーストです。
汚れを落とした後は、水拭き等で中和します。

ただし、床に溢さない(こぼさない)ように注意。
フローリングが白くなります。

床と壁のつなぎ目に新聞紙等を敷くと良いでしょう。

 

4、その他

重曹は酸と混ざると発泡して反応します。
排水口等、手の届きにくい部分の掃除は、これで行うと便利です。

また、キッチンやバスルームに、
粉の重曹をそのまま掛けたり、状況に応じて湿らせたりする方法もあります。

最後に、品質の基準ですが、
「薬用」と「食用」があります。

薬用は医薬品の許可を受けたもので、純度が一番高く、
次いで高いのが食用。商品のラベルに「食品添加物」と表記されています。

食用は薬用に比べて純度は低いですが、安価です。

因みに(ちなみに)、私が使っているものは食用ですが、
クロスや遮光カーテンのカビは食用でも十分落とせます。

 

【主要参考文献】
日本ハウスクリーニング協会『かんたんナチュラルおそうじ術』

掃除の基本・1 煤(すす)払いの意義と、汚れの性質


acworks様(改変)

 

1、現在の生活に活かすべき、煤(すす)払いの「肝」

前回の記事では、

年始に神様をお迎えするための掃除が年末大掃除の起源であり、

具体的には、炊事と行燈で汚れた天井付近の煤(すす)を落とし、
仏壇や神棚を綺麗にした、

と、いったことを記しました。

とはいえ、
やっていること自体は大正時代までの風習につき、

そのまま今日の生活に適用しようにも
当時とは生活環境の隔たり(へだたり)が大きいことで、
用を為(な)しません。

したがって、今日の生活に応用出来るような
煤払いの「肝」となる部分を探るとすれば、

概ね(おおむね)、以下の2点になろうかと思います。

 

1、まず、大掛かりな掃除は最低年1回の頻度でやるべきことと。

2、特に風呂・電灯・炊事関係といった、
(電気・ガス等の)エネルギーの使用が大きく、かつ、
普段掃除を行わない箇所を掃除すること。

 

 

2、作業の効率性を高める「汚れ」の性質

以降何回かは、1、で見出した指針に沿って、
掃除の基本めいたことをおさらいすることとします。

とはいえ、例え、日常生活の基本のようなことであっても、

虎の巻の本を1冊を読むだけでも、
学校や職場等での経験則とは異なる視点からの発見があるものでして、

これに、例えば私の失敗談等を照合するような感じで綴ろう(つづろう)と思います。
皆様の掃除のノウハウの獲得に、少しでも、役立てば幸いと思う次第です。

それでは、早速本題に入ります。

まずは、家の中の汚れとは、そもそもどういうものかについて、
考えることにします。

具体的には、1、(道具等で)取り払えば綺麗になる汚れと、
2、(薬剤等で)分解して落とせる汚れのふたつに分類出来ます。

そして、取り払えば綺麗になる汚れは、個体の汚れとカビ・雑菌、
分解して落とせる汚れは、酸性かアルカリ性の汚れに分類出来ます。

整理すると、以下のようになります。

 

1、取り払えば綺麗になる汚れ

A)個体の汚れ ・・・家の中で一番目立つ汚れ。掃除機で吸い取るのが基本。
B)カビ・雑菌 ・・・見えないものもある。スポンジ等でこすって落とすのが基本。

 

2、分解して落とせる汚れ

A)酸性の汚れ ・・・油汚れ・手垢(あか)・皮脂汚れ等。

水拭き(ぶき)・から拭きで落とせないものは、
アルカリ性の重曹(じゅうそう)や石鹸(せっけん)を使い、
最後に中和。

B)アルカリ性の汚れ・・・水垢(あか)・石鹸カス・ヤニ等。

水拭き・から拭きで落とせないものは酸性のクエン酸を使い、最後に中和。

 

【主要参考文献】
日本ハウスクリーニング協会『かんたんナチュラルおそうじ術』
岡田芳朗・阿久根末忠『現代こよみ読み解き事典』
和の暮らしを愉しむ会『美人の歳時記』

年末大掃除・煤払い(すすはらい)


acworks様(改変)

はじめに

野菜・魚の話をした流れで鍋の話をしたかったのですが、
文献の整理が間に合わず、先に別の話をします。私の手落ちで恐縮です。

さて、何事も、由緒あるものが往時の姿をそのまま残す、
というものは意外に少なく、

今回の年末大掃除の場合も、どうもその例に漏れないようです。

確かに、忙しい年末をさらに多忙にする年末大掃除。

果たして、いくつかの掃除の専門サイトを覗く(のぞく)と、

健気(けなげ)に作業の効率化・簡略化を力説するサイトがある一方で、

そもそも、忙しい年末よりも、
気温・湿度が高くて汚れやすい夏にやった方が合理的だ、と、
説くところすらあります。

こうなると、合理性の追求と並行して、

御家庭や寺社仏閣は元より、企業、官公庁に至るまで、
何故(なぜ)、この時期に大掃除を行うかを考えた方がよさそうな気もします。

そこで、この面倒な掃除を、いつ、どのような手順でやるかを考えるうえで、
参考になるような判断材料を探すべく、

その起源から今日に至る過程について書くことにした次第。

 

1、神様をお迎えするための掃除

年末大掃除は、昔の年中行事で言う、
煤払い—別名:煤掃き(すすはき)・煤納め(すすおさめ)・年の煤。

結論から言えば、昔は、宗教・民俗的な理由のために、
敢えて(あえて)、この時期に行う必要があったのです。

元は、旧暦の年の始めの行事として、
年神(としがみ)様をお迎えするための準備でした。

年神とは、家々で祭る神様のことで、五穀(主要な穀類)を守る神様のことです。

例えば、煤払いが神事に起因すると思しき(おぼしき)例として、
長野県の一部で12月13日に煤掃きの年取、
青森県では12月27日に煤掃きの節句が行われています。

さらに有名なところでは、東京は目黒の不動尊・浅草観音は12月12日、
京都の東本願寺・西本願寺は12月20日に、それぞれ大々的に行います。

私の住む石川県でも、大体この時期には、
県内の有力寺社の煤払いの様子が、県内のニュース番組で報道されます。

 

2、幕府の行事が国民生活に波及

因みに、煤払いが何故、年末大掃除に化けたかと言いますと、

昔は、炊事(すいじ)に薪(まき)を使い、行燈等から煙が出たことで、
天井付近に大量の煤が溜まったからです。

これを大々的に落とすタイミングが年末だったのでしょう。
今日で言えば、換気扇やコンロ付近の油汚れを落とすような感覚です。

そして、これを大々的に行って国民行事として普及・定着させたのが江戸幕府。

幕府は12月13日「江戸城御煤納めの日」とし、
奥女中等が神棚や城中を掃除しました。

この行事が下層社会に波及するのですが、これが中々面白いもの。

特に商家では、この掃除を派手に行い、
終わった直後に皆で主人を胴上げしたそうな。

今日、胴上げと言えば、
プロ野球のペナント・レースや日本一の優勝や結婚式といった、
生涯に何度もない行事でしか拝めないものですが、

それ位に重要な行事だったのかしらと想像します。

 

3、一般家庭の大掃除、今昔

江戸城の行事は、
当然、商家だけでなく一般家庭にも普及します。

その様子ですが、

まずは家族総出で大掃除を行い、
終わった後に神棚に団子や餅を供え(そなえ)、
家族全員で餅(もち)・粥(かゆ)・雑炊(ぞうすい)をすすります。

そして、この日の風呂は「煤湯(すすゆ)」と呼びます。

因みに(ちなみに)、一般家庭では、
大体大正時代までは12月13日に煤払いを行っていたようです。

時代が下って、現在は大掃除は20日以降で、
13日には神棚・仏壇の掃除に止める模様。

13日に掃除しても、元旦には汚れるのが理由のようですが、

私個人の意見としては、
昭和戦前以降の農村への電灯の普及という時代背景もあるように思えます。

また、個人的な話で恐縮ですが、
卑近な例として、東海地方の中小都市の私の実家では、
年末も末の30日前後に大掃除を行います。

その際、市販の小さく丸い三段の鏡餅(かがみもち)を、
机等何箇所かに配置します。

忙しいのは母親で、ほとんどこれと並行して、
御節料理(おせちりょうり)の仕込みを始めます。

対して、不信心というよりはズボラは私は、
例年の如く、ほとんど何もしませんが、
今年は少しは何かしようかと思います。

 

【主要参考文献】
岡田芳朗・阿久根末忠『現代こよみ読み解き事典』
和の暮らしを愉しむ会『美人の歳時記』

中々失敗しない、素人の煮物料理

@tatsuyasweets様(改変)

今回は特に、料理は不得手だが興味があるという単身者のための御話です。

初心者の煮物料理の最大のコツ、

大したことが言えなくて申し訳ありませんが、
とにかくやってみることに尽きると思います。

その理由は、最低限のことを抑えて味見しながら作れば失敗しにくいうえに、
失敗しても、金銭的にも身体的にも被害が少ないからです。

さらには、余程手順にこだわらなければ、時間も大して掛かりません。

 

1、最低限抑えること

さて、調理のアウトラインとしては、

肉・魚・野菜・揚げ物・練り物等の中で和食に合いそうな食材を、

 

量換算で大体、醤油1:料理酒1~2と、

これと半分から同じ位の

そして、肉や魚に応じて、乾物の昆布かダシ用の粉を入れ、

味見して醤油や調理酒を継足しながら煮れば、

極端にヘンな味にはなりません。

*冗談のようですが、これ位アバウトにやっても、それなりの味になります。

 

手始めに、白菜と魚の練り物の煮物をおすすめします。

私の母が忙しい時によく作っていたのものです。
完成品の練り物が相手につき、煮加減は大雑把でも大丈夫ですし、
当たり障りない味です。

また、この要領に慣れれば、

具材や好みに応じて、
みりんや砂糖、味噌(みそ)、生姜(しょうが)等を少々加えると、
さらに美味しくなります。

先の記事の魚の煮物など、まさにこの延長でして、
魚や野菜、調味料を変えれば、バリエーションが大幅に増えます。

さらに極端なことを言えば、皆さまは、しゃぶしゃぶを食べる時、
御家庭では、どうなさっていたでしょうか。

湯に乾物の昆布一枚を入れ、ダシが出るのを待ち、
そのまま、肉や野菜をくべていたのではないかと想像します。

アレにポン酢を添えるのを止めて、
調理酒と醤油を入れるのが基本
です。

 

2、おでん、肉じゃがを我が手で

そして、この応用で何が作れるかと言いますと、
おでんや肉じゃが等が有効射程圏内に入る訳です。

女性の方に殴られると思いますが、

私など、「得意料理は肉じゃがです。」とおっしゃる方は、
あまり料理は得意ではなさそうだなあと、邪推します。

もっとも、こういう余計なことを書くような性格が災いしてか、
私は未だに独身ですし、

肉じゃがの場合は、具材を煮る前に炒める必要があるので、
その意味では一筋縄では行きませんが。

この辺りの話は、東郷平八郎の部下が、
カレー・ルーの代わりに醤油を入れて肉じゃがをこしらえたような話ですが。

 

3、ローリスク、ハイ・リターンの素人の煮物料理

初期投資こそ、調味料を揃えることで多少掛かりますが、
習慣にしてしまえば、驚く程安く作れます。

おでんなんか、茹で(ゆで)卵の殻剥き(むき)が面倒なだけで、
レシートを見れば、コンビニ等で完成品を買うのが馬鹿馬鹿しくなる程。

さらに、天ぷらのように、火事や火傷の怖さもなく、
食後の油処理の煩雑さもありません。

ただ、夏場は日持ちしないことと、作り置きで毎日食べると飽きが来ることで、
少な目にマメに作る必要があることです。

その際の対策として、例えば豆腐等、
安くてそのまま食べられ、かつ栄養価の高いものを買い足し、
煮物のメニューに対する比重を下げるのも手だと思います。

豆腐の場合、スーパーで3パックで100円以下、というものが売られています。
生物の割には、結構日持ちします。

また、これに因み(ちなみ)、私の中学時代の恩師の話を挙げます。

その先生は男性で、当時は20代の独身で母と同居としており、
自宅で野菜を栽培していらっしゃったそうな。

で、子、ではなく、師曰く(いわく)、

ウチでは肉じゃがは、大皿の大盛りで出されるのでウンザリする。
小鉢(こばち)の一品もので出て来る位が品があって良い。

—と、授業中に生徒相手に溢して(こぼして)おりました。

この「故事」の反省を踏まえて、
例えばカボチャの煮物等、日持ちする料理は、
一品ものとして食べるような手を考えると良いかもしれません。

 

4、かつての職場の同僚の話

こういう初歩の初歩のような素人料理について書く理由も、あるにはありまして。

と、言うのは、かつての私の職場の同僚の方々が、
調理を面倒がって高くつくコンビニ弁当や外食を頻繁(ひんぱん)に利用し、

それでも給料が高ければ問題ないのですが、当然そうでもなく、その結果、
何か不意の物入りの月の給料日前に借金を頼む人すらいらっしゃる始末。

ところが、そういう方々の中にも、一念発起して簡単な料理を独学で始めた結果、
懐(ふところ)具合も精神的にも豊かになった、という、
殊勝な方がいらっしゃいました。

私自身、料理ベタながらも、食事とは本来そういうものだと思いますし、

年齢・性別を問わず、料理を趣味にする方が多いことが
それを物語っていると思います。

煮魚の調理の急所、手抜きでも何とかなる初歩の初歩

ガイム様(改変)

 

煮魚の調理。

不得手な方は、ハードルが高そうな印象を持つかもしれませんが、

昨今は、スーパーで安くて使いやすい切り身が売られていることで、

少々のポイントを抑えておけば、
初心者でも簡単に相応に美味しいものが作れます。

むしろ、小中の家庭科で「2」を取った愚図(ぐず)な私のように、
少しの手間でここまで美味しくなるのか、と、驚くかもしれません。

それでは、本題に入ります。
煮魚の要領を箇条書きにすれば、以下のようになります。

 

1、新鮮な魚を選ぶ

2、冷蔵庫に入れる前に、塩水で洗う

3、調理する前に塩を振る

4、3、の後、湯で洗う

5、冷たい汁ではなく、煮たてた煮汁に魚を入れる

6、落し蓋(ぶた)をする

 

主に、この5点。

全てこなすのが面倒という方は、出来る範囲で行うだけでも随分違います。
ただし、調理する前に塩を落とす必要があります。

*調味料以外の消耗品は、キッチン・ペーパーを準備します。

魚の調理以外にも、
例えば、シンクの汚れを少しでも防ぐために炒めものの残り汁を吸わせる等、
色々と重宝します。

スーパーで200円位で売っており、消耗品にしては、枚数は多いです。

 

次いで、箇条ごとの説明。

1、新鮮な魚を選ぶ

個性豊かな魚も、仕入れから3日も経てば、味の個性がなくなります。

新鮮であれば、ダシが薄くても魚の素の味が強く出るのですが、
鮮度が落ちると、こういう力技が効きません。

それでも、単身の勤め人であれば、週にスーパーに通うことが難しことで、
こういう魚を食べざるを得ないのが悲しいところ。

それでも、週末や休日の買い出しの際のポイントとしては、

・一尾魚(いちびざかな)の場合はエラが赤い、目が金色か澄んでいる、

・切り身の場合は、切り口が緩んでいない、身にツヤがある、

体液があまり出ていない、

と、いったようなことがポイントになります。

 

2、冷蔵庫に入れる前に、塩水で洗う

買い出しで疲れて帰宅した直後に
こういうことをやるのも面倒なものですが、

一方で、買った魚をそのまま冷蔵庫に入れると魚の臭みが体内にまわるので
困ったものです。

例えば、単身世帯の方が、
週末の買い出しのストック分とその賞味期限を睨み(にらみ)ながら
週の前半だけでも魚料理を食べたい場合等、

買い置きした魚を少しでも良い状態に保つ工夫が必要になります。

そこで、一尾魚の場合は、エラと腸(はらわた)を除き(切り身はそのまま)、
海水魚は1.5%の塩水で、淡水魚は真水で洗います。

次に、キッチン・ペーパーで水気を拭き(ふき)、
ペーパーでくるんで冷蔵します。

なお、1.5%とは、
海水よりも少し薄い塩味で、魚に塩味が付かない程度の濃さです。

家庭用につき、厳密なものを求めなければ、1、2回程度少し塩を振る感覚です。

 

3、調理する前に塩を振る

魚の両面に塩を振ります。

その理由は、以下。

・余分な水分の脱水により、身が締まる。

・臭みの除去。

・旨味の凝縮(ぎょうしゅく)。

・軽く塩味を付ける。

特に、煮魚の場合は、脱水した時の穴から煮汁の調味料が浸み(しみ)込むので、
薄味でもしっかり味が付きます。

なお、塩は粒子が細かい精製塩(小売で市販のもの)が適しており、
量は目分量で大丈夫ですが、時間は調理の20分程前。

私の場合は、まず、魚に塩を振ってから、
味噌(みそ)汁の具を刻んだり、次の手順「4、」に必要な湯を沸かします。

テキストからすれば横着ですが、
これより時間が短くても、一定の効果はあります。

 

4、3、の後、湯で洗う

塩を振った魚を、煮汁とは別の湯で洗います。
通称、「霜(しも)降り」。

その効果は、以下。

・鱗(うろこ)・骨・血等の汚れの除去。

・生臭みや余計な脂の除去。

・旨味を身の中に閉じ込める。

・魚同士がくっ付かない。

霜降りの方法は、ペーパー・タオルとボウルに冷水を用意し、
魚を湯に潜らせて(くぐらせて)表面が白くなったら引き揚げます。

引き揚げたらそのまま冷水に浸け、指で魚の汚れを優しく洗った後、
ペーパータオルで水気を拭きます。

冷水に浸けるのは、それ以上の熱を入れないためです。

なお、湯の温度は、皮がはげやすい魚は65~70℃。
皮がしっかりしている魚は100℃。

私の場合は、これにかなり横着をしていまして、
温度は熱湯であれば適当。
さらには、冷水から出した後は、紙にくるみもしません。

それでも、実際に行うと分かるのですが、

湯に漬けるだけでも、かなりの量の灰汁(あく)や脂、
カスのようなものを除去出来ます

加えて、味自体も、これをやるだけでも、
私自身が見様見真似で適当に作っていた頃よりも格段に美味しくなっています。

 

5、加熱前の冷たい汁ではなく、煮立てた煮汁に魚を入れる

これを行う理由は、煮汁が熱い場合、
魚の表面がすぐに加熱して固まり、旨味が閉じ込められることと、
加熱時間が短くて済むということが挙げられます。

 

6、落し蓋(ぶた)をする

煮魚の場合は、
煮汁が少ないことと、料理酒が入っていることで、すぐに蒸発します。

ところが、蓋をしていることで、蒸発した水分が再び還元されることで、
要は水分が気体になり、また水分になることで、結果として、
蒸発を遅らせることが出来ます。

これは、冬至の際のカボチャの煮付け等、
煮汁の少ない煮物にも言えることです。

 

【主要参考文献】
野崎洋光『料理上手になる食材のきほん』
新しい食生活を考える会
『食品解説書つき新ビジュアル食品成分表 新訂第二版』